はじめに
2024年8月5日、株式相場を未曽有の暴落が襲いました。2024年から株式投資を始めた投資家からは、「株式投資は危ない」「もう投資は止める」といった声が相次いでいます。その後、相場は回復基調にありますが、この先、再び株式相場が大きく下がる可能性を指摘する見方が少なくありません。
相場の急落は転じて安い価格で株を買えるチャンスでもあります。とはいえ、あの暴落を目の当たりにしてしまうと、なかなか「急落はチャンス」と捉えづらいかもしれません。ただ、ある程度「大底の目安」となる水準を知っていれば、一歩を踏み出す勇気が生まれるのは間違いないでしょう。今回は、相場の暴落過程における「大底の目安」について考えていきましょう。
株式相場に「ショック安」はつきもの
8月5日と6日の2日間で、日本の株式相場は「史上最大の下落幅」と「史上最大の上昇幅」という歴史的な乱高下相場を記録しました。業界関係者や著名投資家からは、「こんな相場は見たことがない」という声が続出。ベテラン投資家も、固唾を飲んで見守るしかないといった雰囲気でした。植田和男日銀総裁による利上げがこの乱高下の発端になったとの見方が支配的であるため、市場では「植田ショック」と呼ばれています。
2000年以降の株式相場を振り返ると、ITバブル崩壊(2000年)、米同時多発テロ(2001年)、リーマンショック(2008年)、東日本大震災(2011年)、チャイナショック(2015年)、コロナショック(2020年)など、数々の「ショック安」が発生しています。ほかにも、バーナンキショックやアップルショック、ブレグジットショックなど、規模の小さいショック安を含めると10件前後に上るでしょう。
こう見ると、株式相場は2~5年程度の間隔でショック安に見舞われていることになります。植田ショックは史上最大の値幅を記録したため、当面は人々の記憶に深く刻まれるものになるでしょう。とはいえ、値幅の差こそあれ、ショック安自体は決して珍しいものではないのです。
2020年3月のコロナショックでは、まだ相場が下落している3月中旬頃から、逆張り(相場の流れとは反対の売買)で買い向かい、その結果、大きな利益を得る投資家が少なくありませんでした。正確な統計はありませんが、当時、筆者は個人投資家のブログやX(当時はツイッター)などを逐一チェックしていたため、逆張りで大勝ちした投資家の声を実際に目にしています。こうした投資家たちは、過去の相場急落の経験を生かして、やがて相場が反転に向かうことを予想し、買いに向かったのでしょう。
といっても、相場の一番安い点、いわゆる「大底」を正確に予想することは、相場の神様でもない限り不可能です。どんなベテラン投資家や百戦錬磨のプロたちでも、大底を正確に言い当てることはできません(逆に、「正確に言い当てられる」などという人がいれば、うさん臭いと思っていいでしょう)。彼らは、「相場が下がり続けることはなく、いつかは反転する」という前提のもと、「だいたいこのあたりが底になるだろう」、あるいは「大底にはならないかもしれないが、買い下がる(下落したら再び買うこと)つもりで打診買い(様子を見ながら小口で買いを入れること)する」といった考えで相場に臨んでいるはずです。