はじめに

投資信託を長期保有するメリットのひとつとして、「再投資効果」を挙げる人がいます。これを「複利運用」と言う人もいますが、はたしてその効果は期待できるのでしょうか。


追加型は無分配が原則としてできない

投資信託は一定期間ごとに「決算日」が設けられています。決算日とは、前決算日の翌営業日から今決算日までの運用によって生じた損益を確定させる日のことで、仮に利益が生じていた時には、そこからファンドの保有者に対して分配金が支払われます。

投資信託には、運用が開始された後も同一ファンドを追加購入できる「追加型」と、運用が開始されたら原則として同一ファンドを追加購入できない「単位型」があります。このうち単位型には「無分配型」といって、最長3期までは分配せず、非課税のまま運用収益を繰り越せるものもありますが、追加型は原則として無分配型は認められていません。

ただし、大半の販売金融機関は、「分配金再投資コース」といって、一度支払われた分配金に対して20.315%を課税した残りの資金で、同一ファンドを買い付ける仕組みを用意しており、これを利用すれば、実質的に複利的な運用ができるとされています。

投資信託に複利効果は期待できない

現在、単位型投資信託はほとんど新規設定されておらず、追加型投資信託が主流です。したがって、ここから先は追加型投資信託を前提に話を進めていきます。

複利運用効果によって投資効率を高められると言われている分配金再投資ですが、はたしてそうなのでしょうか。ちょっと計算してみましょう。ちなみに計算に際しては分かりやすいように、税率を20%、分配金は全額普通分配金にします。

たとえば基準価額1万円でスタートしたファンドが1万2000円になり、2000円の分配金を課税したうえで再投資すると、翌期のスタート時点の基準価額は1万1600円になります。そのまま基準価額が翌期も値上がりし続ければ、確かに複利的な再投資効果が得られたと言えるのかも知れませんが、もし翌期の決算日までに、基準価額が1万円に値下がりしたらどうでしょう。そう、1600円分を再投資して投資効率を高めたつもりが、実は前期の運用で得られた1600円の利益を、まるまる失ってしまうことになるのです。

預貯金のように元本が保証され、かつ確定利回りの商品なら確実に複利効果を得ることができ、いわゆる指数関数的に資産が増えていきます。

しかし投資信託は、基準価額が値上がり・値下がりを繰り返すため、指数関数的に資産が増えるようなことにはなりません。

よく投資信託の再投資効果について、「年平均リターンが5%だったとして、これを再投資すると…」といった前提を置きながら、指数関数的に資産が増えるかのような説明をする人もいますが、これは誤解を招きます。そもそも、年平均5%で継続的にリターンを出せる投資信託など、あるはずもないからです。

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