はじめに

◆金融政策と金利差
金利は為替レートに大きな影響を与える要因の一つです。異なる国の金利差が為替市場に影響を及ぼすため、金利が高い国の通貨は人気が集まりやすくなります。これは、高い金利を提供する国の通貨を持つことで、投資家がより高いリターンを得られるからです。例えば、日本の金利が低く、アメリカの金利が高い場合、投資家は円を売ってドルを買い、米国の債券などに投資しようとします。また外貨預金でドル預金をする方も増えます。この動きが続くと、円安ドル高となります。

逆に日本の金利が上がると円高になります。7月31日に日銀金融政策決定会合で、日銀は政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決定。植田総裁の記者会見ではさらなる利上げを否定しませんでした。一方でアメリカの中央銀行であるFRBは7月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を8会合連続で5.25〜5.5%に据え置いたものの、パウエルFRB議長の発言で早ければ次回の9月会合で利下げを行う可能性があると言明。日本の金利を上げる方向、アメリカは金利を下げる方向に動いたため為替市場でドル円は円高ドル安方向に大きく動きました。

◆政治的要因
政治の安定性や政府の政策も為替レートに影響を与えます。たとえば、ある国で政権が交代し、経済政策が大きく変更される可能性がある場合、その国の通貨に対する信頼が低下し、通貨が売られることがあります。また、戦争や政情不安があると、その国の通貨は避けられる傾向にあります。

政府要人の発言も為替の値動きを左右させることがあります。直近では石破新首相が就任後に「追加利上げ環境にない」との発言をしたことや岸田政権の成長路線を引き継ぐとしたことで早期の追加利上げ観測が後退し、為替市場でドル円は円安方向に動きました。

◆貿易収支
貿易収支も為替に影響を与えます。ある国が輸出を多く行うと、その国の通貨が海外で多く使われるため、その通貨の需要が高まり、通貨が強くなります。逆に、輸入が多い国では、その国の通貨が海外に流出しやすいため、通貨の価値が下がることがあります。例として日本の2024年上半期(1〜6月)の貿易収支は3兆2345億円の赤字となりました。半期ベースの赤字は6期連続です。日本はエネルギーをほぼ輸入に頼っているため、エネルギー価格が高まると輸入額の伸びが大きくなり赤字幅は拡大しやすいです。またそのような事情(エネルギーなどの輸入が必須という事情)から日本の貿易赤字傾向は継続すると考えられ、それは円安圧力となります。

◆デジタル赤字や海外投資
私たちの毎月支払っているAmazonやApple、Disney+やNetflixなどの海外の企業のサブスクリプションサービスのお金は、貿易収支同様、円売りドル外圧力、つまり円安圧力となります。家計におけるデジタル赤字はかなり大きいので、そういった意味でも長期的には円安圧力はかかり続けると考えて良いのではないでしょうか。加えてNISAでS&P500やオールカントリーなど海外の株式に投資している人は多く、それも同様に円安圧力となります。

◆経済成長率
各国の経済成長率も為替に影響を与えます。経済が成長している国の通貨は、他の国からの投資を呼び込みやすくなり、通貨の需要が高まります。国力が為替に反映されると言われるのはこのためです。例えば、アメリカの経済が好調であれば、ドルへの需要が増え、ドル高になることが多いです。

為替と投資

ではここからは為替と投資の関係についてお伝えします。

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