はじめに
都市部のマンションなど、不動産の取引相場は高値のまま、日に日に手を出しにくい金融資産と化しつつあり、一方で郊外の空き家などは、タダでも売れないケースもあるなど、不動産の価値は顕著な二極化が進行しています。
このように、不動産の価値の二極化が進行している背景には、そのエリアにおける不動産需要の多寡が大きく影響しています。しかし、このようなマクロ的観点を一旦置いておいて、ミクロ的観点でも不動産価値に大きく影響しうる要素はあります。つまり、ある2つの不動産があり、それらがまったく同じエリア、同じ土地面積、同じ築年数の建物がある場合でも、その価値が数倍にも変わってしまう場合があるのです。
もちろん、「一方がゴミ屋敷だったら」「一方が庭木の整備も放置していたら」「一方だけ急傾斜の土地だったら」など、人為的な価値減少や、誰がみても明らかな不動産の環境差など、不動産の価値を左右する要素は枚挙に暇がありません。
ただ、今回は、そんななかでも『道路』をテーマにご紹介します。一見すると、普通の道路に接していて、何ら問題がなさそうな不動産であっても、いくつかのポイントを満たしているか否かで、不可抗力的にその価値は数倍にも差が生じる場合があるのです。実際に、不動産会社の営業マンの多くは、「まずは道路がどうなっているかを調べる」といっても過言ではないほど、道路は不動産の価値を決める上で重要な要素になっています。
こんな道路は要注意!
「道路がどうなっているか」について、日常生活上で気になることは、車が通れるか否か、公道か私道かくらいだと思います。実際に、この違いだけでも、不動産の価値には大きく影響します。しかし、不動産取引上は、主に建築可否を決める建築基準法で、いろいろな制限を受けるため、道路について緻密に確認する必要があるのです。
ここからは、専門的な観点から、不動産の価値に影響を及ぼしうるものにはどんなものがあるか見ていきたいと思います。
①道路に接している土地の長さが2m未満
いわゆる「間口」といわれる、道路に接している土地の長さが2m未満の場合、その土地に建物を建てることが認められていません。イメージとして、敷地の入口が駐車スペース程度の細さで、その奥に広い敷地が広がっている旗のような形状の土地(旗竿地とも呼ばれています)です。
比較的最近になって新たに分譲された土地は、このような敷地形状であっても、このルールを意識して2m以上の間口が確保されていることがほとんどです。しかし、相応の築年数が経過している建物の中には、この間口が足りていないケースも珍しくありません。この場合、新築当時は許可基準が緩かった等で建築できたものの、今は建替えも認められないため、なんとか既存建物の修繕を重ねて延命しながら使用するか、解体してずっと更地として使用するしかなく、不動産の価値が著しく低下してしまうことになります。
②面している道路の幅が4m未満
上記は道路に面している長さ(間口)のお話でしたが、これは、面している道路そのものの幅(幅員)が4m未満の場合は、原則として建物を建てることができません。
尚、幅員4mといえば、車1台が通行できるものの、路上駐車があると通行に支障が生じる程度の幅であり、そう考えると「日本中、そんな場所は無数にあるし、そこにも建物は沢山建っているのでは?」と思ってしまいます。
これは、この法整備がなされる前に建築されているケースのほか、現在の幅員が4m未満の道路でも、行政が特別に指定した道路に面している場合には、一定の条件下で建築できるなど、例外的な規定がいくつか存在しているためです。
なお、その例外の中でも比較的有名なものが「セットバック」です。これは、面した道路幅員が狭いぶん、自分の敷地の一部を道路として提供することで、道路の幅員を確保するものです。これによって建築できないはずの土地に新築できるようになりますが、敷地が後退(セットバック)して、実際に使用できる敷地面積が減少するため、事実上の不動産価値が減少することとなります。