はじめに

運用会社の多くは未上場です。なかにはスパークス・グループやSBIレオスひふみのような上場企業もありますが、それは極めて少数。では未上場である運用会社の業績を把握する方法はあるのでしょうか。


未上場企業は決算を公告しなくてもよい?

上場企業は四半期ごとに決算の開示が義務付けられています。だからといって、未上場企業だから決算を開示しなくても良いという決まりはありません。未上場企業でも決算内容を公告する義務はあります。それは会社法の規定にもあるのですが、決算日ごとに貸借対照表や損益計算書を作成しても、それを不特定多数の人が閲覧できる形で開示していないのが、現実です。

それは恐らく、開示しなかったとしても、社会的に大きな悪影響を及ぼすことにはならないからです。

たとえば近所のパン屋さんが潰れたとしましょう。あなたに何か深刻な影響は及ぶでしょうか。もちろん、気に入って通っていたパン屋さんが無くなれば、いくばくかの喪失感を覚えるでしょう。でも、無くなったからといって、あなたに経済的な悪影響が及ぶことはありません。

もちろん、そのパン屋さんに出資している、もしくは原材料を納めている立場の人にとっては、債権・債務の関係がありますから、いきなり倒産されるのは困ります。そういう関係がある人はともかく、そのパン屋さんで買い物をするお客さんまで、パン屋さんの財務状況を把握する必要はありません。

運用会社の財務内容もチェックする

しかし、上場企業になると話は別です。典型的なBtoB企業で、商品やサービスを一般消費者に提供していない企業だとしても、株式を上場している以上、その株式を保有している人は、純投資を行っている機関投資家、資本関係がある事業法人、親会社、そして個人投資家に至るまで幅広いため、その企業が倒産すると、未上場企業とは比べ物にならないほど多くの人に、経済的な損失を与えることになります。だから、上場企業は決算日ごとに詳細な財務諸表を作成し、公衆の閲覧に供するのです。

前述したように、運用会社は未上場企業が大半です。J-REITのような投資法人は株式を上場していますが、公募投資信託を設定・運用している運用会社で株式を上場しているのは、スパークス・グループと、SBIレオスひふみだけです。

本稿では、公募投資信託を設定・運用している未上場の運用会社を対象にして、話を進めていきます。

運用会社が倒産したり、事業から撤退したりしても、ファンドを通じて保有している受益者の資産は保全されます。

ただ、倒産や事業撤退が行われた時点で運用の継続性が断たれてしまうので、特に投資哲学、銘柄選択眼など運用担当者のオリジナリティが問われるアクティブファンドの場合は、運用会社の経営の持続性も、ファンド選びの重要な判断要素になってきます。投資対象や運用方針、過去の運用成績、純資産総額だけでなく、運用会社の財務内容もチェックする必要性が高まってきたのです。

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