はじめに

フジHDの稼ぎ頭は不動産業

直近発表された2025年3月期の決算説明資料をみると、フジHDの事業内容の実態がよくわかります。

画像:フジ・メディア・ホールディングス「2025年3月期第2四半期(中間期)決算説明会資料

事業部は大きくふたつに分かれており、わたしたちがよく知っているフジテレビを含むメディア・コンテンツ事業と、サンケイビルなどの家賃収入などを含む都市開発・観光事業です。売上高では、メディア・コンテンツ事業が全売上高の74.5%を占めていますが、営業利益は全体の32%しかありません。一方、都市開発・観光事業部の営業利益は65.6%と大きな割合をしめています。つまり、フジHDの稼ぎ頭は不動産業ということです。これは、フジテレビがメディア事業においてかつての輝きを失った現実を示しています。

株主からすると、資産を生かしていないこの状況は非常にもどかしく感じます。大株主であるダルトンは、2024年5月にフジ・メディアHDにMBO(経営陣が参加する買収)を要求する書簡を送り、企業価値の向上のため資産売却などを通じてリストラを進めることを求めました。25年の株主総会でも、議案の提出を検討しているため、次回の株主総会のタイミングで、株主還元の拡大が進む可能性は非常に高いのです。

株主総会で経営陣一掃劇を見られるかも

株主であっても、株主総会に出席せず、議決権を放棄する人も個人投資家には多いかと思います。なぜなら、少数しか保有しない個人の議決権が、企業の経営に大きな影響を及ぼすことはほとんどないからです。最近は、お土産を出す企業も減っているので、ますます株主総会に出席する個人投資家は減っているのではないでしょうか?

ただし、次回のフジHDの株主総会は、株式市場の歴史に残るドラマが起こるかもしれません。というのも出席株主の投票の結果によっては、既存の取締役を解任できるからです。会社法では、株主総会に出席した株主の過半数が取締役の選任に賛成しなければ、否決することができます。経営陣を総とっかえして、ガバナンスのしっかりした企業に生まれ変わる瞬間を目撃することになるかもしれないのです。

過去には、2021年の東芝の株主総会で、取締役会議長の永山治氏と監査委員である小林喜光氏の再任議案が反対多数で否決された事例があります。株主総会が単なる形式的なイベントではなく、実質的な経営監視の場であることが示された歴史に残る出来事でした。

フジHDの株主総会では、そこまで大胆な変革にはならずとも、株主からのきつい質問が飛び交うことは間違いないでしょう。それに対して経営陣がどう向き合っていくのかを見学するだけでも、株主総会出席のチケットには価値があると思います。

ここ最近は、コーポレートガバナンスという言葉を耳にする機会が増えました。今回のフジHDをめぐる騒動は、あらためてコーポレートガバナンスについて、わたしたち投資家が考えるきっかけとなりそうです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!複数の証券口座から配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]

この記事の感想を教えてください。