はじめに
働き方が多様化する中、子どもとの時間を大切にしながら、やりがいのある仕事に挑戦したいと考える方が増えてきています。その中で、パートから在宅で働くことを検討する方も多いのではないでしょうか。
個人事業主として在宅ワークを始めるのであれば、「開業届」を提出する必要があります。しかし、扶養内で働いていた状態から、在宅ワークを始めていこうと考えている場合は注意が必要です。
この記事では、個人事業主の場合の扶養条件が開業届の提出とどのように関係しているのか、また後悔しない開業方法について解説します。
扶養内で開業届を提出すると損する可能性がある
2人の未就学児を育てているAさんは、子どもとの時間をもっと取りながら仕事をしていきたいと考え、扶養内パートを辞めて在宅ワークを始めました。業務委託が中心の個人事業主になるため、開業届の提出が必要だと知り、提出しましたが、夫の社会保険の扶養から外れてしまったのです。
在宅ワークを始めたばかりで売上があまり無い状態にも関わらず、年間約27万円の社会保険料(国民健康保険料と国民年金保険料)を自分で納めることになり、家計への負担が増加しました。パートの時と同様、売上130万円までは扶養内で社会保険料の負担は無いと思っていたため、「こんなはずじゃなかったのに…」と在宅ワークを始めたことを後悔しているAさん。
実は、在宅ワークを始めたことで扶養を外れたのではなく、「開業届を提出」したことで扶養から外れてしまったのです。
なぜ開業届を提出したことで扶養から外れてしまったのか
一般的に、配偶者の社会保険の扶養に入る目安は「年収130万円以下」となっています。ですが、Aさんのような個人事業主が配偶者の扶養に入る場合、年収130万円以下の基準を「売上」で見るのか「所得」で見るのかという基準が各健康保険組合によって異なります。また、個人事業主の場合は収入要件だけでなく、開業届提出の有無も扶養に入れるかどうかの基準に加わってくるのです。
Aさんの場合、夫が加入する健康保険組合では、年収の基準の前に「開業届提出の有無」の基準があり「開業届を提出していると社会保険の扶養に入ることができない」という条件になっていました。そのため、売上が少ない状態でも開業届が提出されている時点で扶養から外れることになったのです。
開業届は、提出することで事業を興したと正式に認められる書類です。「事業を興しているのであれば、自立できているので扶養に入る必要はありませんよね」と判断する健康保険組合もあるため、売上に関係なく扶養に入れない場合があります。