はじめに

誰もが一度は食べたことがある「ナビスコリッツ」。そのリッツにそっくりなクラッカーが12月1日に発売されました。その名は「ルヴァン プライム スナック」。販売元はヤマザキビスケット(YBC)という会社です。

そっくり商品はこれだけではありません。あの「オレオ」によく似た「ノアール」というクッキークリームサンドも、同日にYBCから発売されています。

なぜ、こんな事態になっているのか。理由を調べてみると、昭和のメロドラマのようなドロドロした事情が潜んでいました。


米本社の方針転換で46年の歴史に幕

リッツとオレオは、製パン大手の山崎製パンが米国のナビスコとライセンス契約を結び、1970年から2016年11月末まで46年にわたって生産・販売してきました。“信者”と言っていいほどの熱烈なファンもいるロングセラー商品でした。

しかし、現在ナビスコのライセンス供与権を持っている米モンデリーズ・インターナショナルが「グローバル戦略の中で、日本のようなライセンス契約の形をとっているのは異例。モンデリーズの日本法人に直接製造・販売させる」と、方針転換を打ち出したのです。

「下請けなら、任せてもいい」と言われた山崎製パンは、提携解消を決断。2016年8月で生産を、11月末で販売も終了しました。

1年間は類似商品を販売できない契約

2016年9月からは、モンデリーズが海外の委託工場に製造させたリッツ、オレオが店頭に並び始めました。このタイミングで、山崎はYBCという会社を設立。ここでリッツに代わる「ルヴァン」の生産・販売を開始しました。

リッツが小麦を原料とし、丸型であるのに対し、ルヴァンはライ麦が原料で、形も八角形。箱もリッツの赤とは間逆の濃紺でした。YBCがこんな対応策を取った理由は、1年間は類似した商品を販売することが許されない契約だったためです。

「チップスター」や「エアリアル」「スリムサンド」は日本独自商品で、ライセンス料を支払ってナビスコマークを付けて販売していたので、こちらはマークをYBCに変えただけでした。

1年目の勝負はルヴァンに軍配

長い年月をかけてブランドを浸透・定着させた功労者に対して、なかなか手厳しい仕打ちです。YBCとしては自ら育てたブランドに挑戦しなければならない展開でしたが、実は大健闘をしていたことがわかりました。

下のグラフは、全国のスーパーにおけるリッツとルヴァンの販売データです(True Data調べ)。

1店当たりの販売点数で、ルヴァンはリッツを大きく引き離しています。今年10月だけ逆転していますが、これは10月の一時期だけ、リッツの単価が極端に下がったことが原因のようです(下図)。11月になって単価が元に戻ると、数量も元の水準に戻っています。

“信者”以外からもルヴァンに同情票が集まった可能性は高そうですし、YBCの強力な営業力もモノを言ったでしょう。とはいえ、ルヴァン健闘の大きな要因は、やはり日本の消費者がルヴァンを支持したということだと思われます。

成否を分けたのは生産管理レベル?

というのも、両社の生産管理のレベルに明らかな違いがあるからです。モンデリーズは海外の自社工場で生産しています。リッツはインドネシア、オレオは中国です。

リッツは13枚を1パックにして3パックが1箱に収められているのですが、「(1パック当たりの)枚数は目安です」と記載されていて、実際買って開けてみると、15枚入っていて、厚みも焼き色もかなりのバラつきがあります。

左上から時計回りに、ヤマザキナビスコのオレオ、モンデリーズのオレオ、YBCのノアール

オレオにはこの表示はありませんが、YBCのノアールは2枚にはがすと片方にクリームが残り、きれいにはがれたのに対し、モンデリーズのオレオは両方にクリームが残り、きれいにはがれません。

類似商品を生産できない期間が終了したため、YBCは12月からリッツと同じ小麦原料で丸形のルヴァン プライム スナック、オレオそっくりのノアールを投入しました。まだ出荷が始まったばかりで、現在は一部の大型スーパーでしか売られていませんが、あと1~2週間もすれば、全国各地のスーパーやコンビニでも手に入るはず。正々堂々の一騎打ちの結果が見え始めるのは、1月以降になりそうです。

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