はじめに
日本各地で、使われなくなった不動産が増加しています。これらの不動産は、所有者にとって負担となり、手放したくても売却が難しいケースが多々あります。そんな中、資産価値が低く、なかなか買い手がつかずに困っている不動産を有料で引き取る「不動産有料引取サービス」が注目を集めています。
一方で、一般的な不動産仲介サービス等と異なり、法規制が及ばない部分があることや、怪しい事業者も散見されるということで、国も注視すべきサービスの一つとして公表しています。
本記事では、要らない不動産が生まれた背景から、不動産有料引取サービスの実態や利用時の注意点までを詳しく解説します。
要らない不動産が生まれた背景
少子高齢化と人口減少により、地方の空き家や山林、農地といった未利用地が増加し、需要と供給のバランスが崩れています。そして、これらの不動産の多くは相続をきっかけに所有しているケースが多く、所有者にとっては必要のない不動産として、望まない所有になっていることが少なくありません。特に、遠方に住む相続人にとっては、利活用や管理が難しいことも相まって、何もせず放置される傾向にあります。
一方、未利用だからといって、草刈りなどの維持管理や固定資産税が不要になるわけではなく、さまざまな支出を伴います。そのため、”資産”であるはずの不動産が”負債”と化し、「負動産」と呼ばれることもあるほどです。
また、バブル崩壊以降、地方不動産の価格の下落や需要の変化により、売却が難しい物件が増えている側面もあります。特に、交通の便が悪い地域や過疎地の不動産は、買い手がつかず、所有者が手放せない状況が続いています。
要らない不動産を処分する方法は
要らない不動産を処分するための最も一般的な方法は、地元の不動産会社などに依頼して、不動産を売却することです。しかし、前述の通り、需要の低い地域や条件の悪い物件は、買い手が見つからないことが多いため、必ずしも容易に売却処分できるとは限りません。そのため、依頼を受ける不動産会社側にとっても、市街地の不動産に比べ売却までに時間や手間を要すこと、それに対して期待できる手数料収入などが見合わないことから、相談にすら乗ってもらえないケースも散見されます。
そんな中、2023年に「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。この制度は、所有者不明となっている土地を抑制する目的で創設され、相続によって取得した土地のうち、一定の条件を満たす土地は国に有料で引き取ってもらうことが可能になりました。かかる費用は20万円~と決して安くはないものの、所有経費がかさんでいき、いずれは自分の子や孫などに押し付けてしまうことを避ける手段として期待されています。
しかし、申請書類が多く煩雑で、審査期間も半年~1年程度と時間を要すうえ、建物のある土地(空き家)や境界が定かでない土地は引き取りの対象外とされているなど、審査の結果引き取ってもらえないケースも多く、誰もが気軽に利用できる制度とはいえない側面もあります。
そこで、近年注目されているのが、不動産有料引取サービスです。これは、所有者がサービス事業者に対して一定の費用を支払うことで、不動産を引き取るサービスを提供しており、その仕組みは国の制度と同様です。
不動産有料引取業者の特徴と魅力
不動産有料引取サービスの特徴は、処分するまでの手続きが簡単であるという点です。国の制度と比べても、引取条件が緩く、一部の農地を除いて、どんな不動産でも引き取ってもらえます。また、ほとんどの場合は最低限の資料を提供すれば、サービス事業者が自ら物件調査などを行い、契約に向けサポートしてもらうことができます。例えば、境界や場所すらも不明な山林や、傷みが著しく進行している空き家などでも引き取ってもらうこともできるため、遠方在住や高齢といった事情で処分にあたっての準備や整備に十分な時間を割けない所有者にとっても、気軽に利用できる点が魅力です。