はじめに

不動産有料引取業者は怪しいビジネス?

不動産引取サービスは、要らない不動産の処分に困った所有者にとって、非常に魅力的なサービスですが、一方で注意すべき点もあります。

以前より国民生活センターにおいて警鐘を鳴らしているほか、国土交通省においても、2025年2月14日に開催された不動産部会において、不動産引取サービスは多くの所有者にとって魅力的なサービスであり大きな期待を寄せている一方、注意点についても部会報告とともに公表されました。

注意点をまとめると、以下の3点が挙げられます。

①取引の安全性
サービス事業者の中には、不動産取引の経験や知識の少ない個人の弱みにつけこんで、しつこく契約を迫る営業手法を取ったり、契約前に名目不明な前金や契約後に説明のなかった追加費用を請求したりと、取引の安全性が脅かされるケースがあります。

そのため、不動産引取サービスを利用するうえでは、
・契約締結前までに、業者から費用や引取条件等の明確な提示と説明があること
・原則として、契約不適合責任が免責であること
・引取料金の支払が、所有権移転登記申請時以降であること(前金の支払がないこと)
といった点を慎重に確認することが重要といえるでしょう。

②不動産の適正価格での取引機会を確保すること
前述のように、サービス事業者の中には、契約を取るために、本来は資産価値がある不動産に対しても資産価値がないことを強調して、不動産所有者にとって有益な取引機会を奪ってしまう場面が生じるリスクがあります。

そのため、豊富な不動産知識に基づいて、消費者目線で客観的なサポートが期待できるかを見極めることが重要といえます。

③引取後の不動産の適正な管理を確保すること
不動産引取サービスで処分できた所有者にとっては、所有者名義がサービス事業者に移転した以上、その不動産の管理責任からも解放され、その後にトラブル等に巻き込まれる可能性は低いことになります。

しかし、その不動産の近隣所有者にとっては、サービス事業者が適正な管理をしないことで、例えば草木が伸び放題になったことで害虫や日照障害、倒木などの影響を被る可能性があります。実際に、サービス事業者の中には引き取った後に何もせず、近隣苦情等にも対応しない事業者もあるという噂もあり、最悪の場合は処分したはずの所有者に対して「新所有者が管理をしてくれないから、なんとか言ってくれ」といった苦情を受け、間に挟まれてしまうリスクも否めません。

その意味で、一つの目安として

  • 引取後の管理や売却等の方針について、ホームページ等で提示すること
  • 引取後の不動産の管理について、近隣からの苦情等があれば適切に対応し、放置しないこと
  • 営業実態のある事務所住所、連絡先を、ホームページや郵送物等を用いて公表していること

といった点を確認することが重要といえるでしょう。

ちなみに、サービス事業者が引き取った後に、その不動産をどうしているかは各社方針がまちまちですが、自社でキャンプ場や宿泊施設に整備をして利活用をしているケースやソロキャンプ用地、DIY、家庭菜園といった利用目的の一般個人に転売しているケースなど、所有中の維持管理は当然として、遊休状態からの脱却を積極的に図っている事業者も多数あります。

これらの不動産引取サービスについては、宅建業法等では規制対象外であるという法律面の現状もあり、現在は引取サービス事業者同士で自主規制を図り、安全な取引環境を目指す取り組みも進んでいます。

信頼できる事業者を探すことが重要

使い道のない不動産を持ち続けることは、精神的にも経済的にも大きな負担となります。手放す手段として、不動産引取サービスの活用は有効ですが、事業者選びには十分な注意が必要です。

本記事で紹介したように、不動産の処分には売却、国庫帰属などさまざまな方法があります。すぐに手放すのではなく、それぞれのメリット・デメリットを比較し、自分にとって最適な選択をすることが大切です。

もし「どうしても売れない不動産がある」「早く手放したい」と悩んでいるなら、信頼できる事業者を探すことが重要です。契約内容や費用、その後の管理方針等をしっかり確認し、納得した上で手続きを進めるようにしましょう。

最後に、不動産は単なる資産ではなく、管理や処分の仕方によっては大きな負担にもなります。所有者としての責任を果たしながら、より良い形で次世代へと不動産を引き継ぐ意識を持つことが重要であるといえます。

<参考>
国民生活センター「原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!
国土交通省「第42回社会資本整備審議会 産業分科会 不動産部会(2025年2月14日)資料
不動産有料引取業協議会

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