はじめに
東京証券取引所(以下、東証)は2月4日、親子上場の在り方への関心が高まっているとして「親子上場等に関する投資者の目線」と題した資料を公開しました。
親子上場のメリットとデメリット
親子上場とは親会社が子会社の過半数の株式を保有し、ともに株式市場に上場している状態をいいます。親子上場のピークは2006年度末に417社でしたが、2024年3月末時点では190社となり、30年ぶりに200社を下回りました。
親子上場は、企業グループの資本効率を高め、子会社を上場させることで資金調達の面や知名度を利用して優秀な人材を確保できるなどのメリットがあります。また、親会社から独立することで、より迅速な経営判断が可能となります。
一方で、親会社が自らの利益を優先すると子会社の利益との相反が生じ、少数株主の利益が損なわれるリスクがあります。他にも、親会社の役員が子会社の役員を兼任している場合が多く、子会社独自の決定が行いにくい側面もあり、先述した「迅速な経営判断」とは相反することもしばしば起こります。
このようにメリットとデメリットが混在している状況ですが、昨今では利益相反やガバナンスの面で問題視されており、投資者からの追求は厳しさを増しています。
親子上場で問題視されていること
東証は「親子上場の在り方への関心が高まっている一方、現状の上場会社による取組みや開示の内容を巡っては、投資者の目線とのギャップが生じているとの指摘が寄せられております」と「親子上場等に関する投資者の目線」を公表した理由を記しています。
具体的な指摘の内容は、現状のグループ経営や少数株主保護に関する取組み、開示について、「依然として大部分の事例で、親子上場の形態をとる意義について、投資者の目線を踏まえた検討が行われていない」「投資者が期待する開示内容とギャップが生じている」と記載されています。
その事例として、「親会社としてどのようなグループ経営の方針を有しているのか?」という質問に対して、親会社からの回答は「当社は子会社の経営の独立性を尊重している。子会社の経営については、子会社自身と対話してほしい」といった内容が記されています。
逆に子会社に対して「なぜ親会社の子会社として上場しているのか?その意義は何か?」と投資者が子会社に質問をすると「親会社の意向を踏まえたものであり、親会社に聞いていただきたい」と回答がなされる場面が見受けられるとしています。
親会社に意見や質問をすると、子会社の独立性などを盾に子会社に聞いてほしいと主張。一方、子会社に意見すると親会社の意向なので親会社へ聞いてほしいと矛先を変えられてしまうのでは堂々巡りと言わざるを得ない状態です。このようなラチが明かない状態が続けば、不満や不安を感じる投資者が現れるのは自然なことだと思います。