はじめに

国だけじゃない、私たちにもできること

高額療養費制度をめぐる議論は、今後ますます重要性を増していくでしょう。国に対して多くの要望があるのは当然ですが、私たち自身にもできることがあります。

今回の調査では、高額療養費制度のしくみである、多数回該当や世帯合算、そして調剤薬局との合算など全体的な内容を「理解していた」と答えた人はわずか37%にとどまりました。制度を知らなかったことによって、結果的に本来よりも大きな負担を強いられていた可能性もあるでしょう。

日本では「お金の話」や「病気とお金」に関する話題を避ける傾向があり、特にがんと診断された後は、周囲に相談しづらくなりがちです。

「どの段階で“困った”と言ってよいのか」「相談したら不利にならないか」といった心理的なブレーキが働き、情報収集の遅れにもつながっています。

医療者・FPとの連携で、生活全体に寄り添う支援を

インターネットで制度やお金に関する情報は得られる時代ですが、「横並びの情報」では、人それぞれ異なる治療状況や生活、家族の事情に対応しきれません。たとえば、子育て中で教育費がかかる人、住宅ローンを抱える人、親の介護を担っている人など、個々の事情は実に多様です。

だからこそ、困ってからではなく、がんと診断された時点で「医療費制度やお金の情報」を確認できる相談や情報提供の場が必要だと感じます。一番身近な相談場所は病院のがん相談支援センターです。

制度の利用や働き方の調整とともに、家計の視点を取り入れることが、治療と生活を両立するうえで大きな助けになります。そのためには、医療機関において「制度・働き方・家計」を一体的に捉えられる相談体制の構築が求められます。

私自身も、実際に千葉の病院で医療ソーシャルワーカーと連携しながらFP相談会を実施していますが、病院だからこそ可能な医療従事者との連携の重要性や、患者さんに必要な情報をタイムリーに届ける意義を改めて実感しています。

高額療養費制度をはじめとする社会保障の課題に対する議論が進む今、制度そのものの在り方と、支援がどう届くべきかという実践の両面を、社会全体で考えていくべきときに来ているのではないでしょうか。

患者や家族の暮らしの実態に根差した議論と支援の仕組みが、制度を本当に「使えるもの」にする鍵になると感じています。

調査概要
調査名:がん患者の経済的負担に関する実態調査
調査目的:がん診断時と治療中の収入の変化が、患者および家族の医療費負担や日常生活に及ぼす影響を調査する。
調査対象:がん患者、経験者(69歳以下の方)ご家族やご遺族(患者さんご本人の家計の状況が分かる方)、362名
回答方法:インターネット調査
対象期間:2025年2月19日~28日
調査報告:2025年3月18日

調査主催団体:一般社団法人患者家計サポート協会

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