はじめに
2025年春、世界の株式市場が大きく揺れ動いています。トランプ米大統領が貿易赤字が大きい国や地域を対象にした相互関税を日本時間の9日午後1時過ぎに日本を含む約60の国や地域を対象に発動しました。
関税措置の見直しを求める各国との交渉の行方が焦点になる中、トランプ米政権による貿易、関税政策の先行き不透明感、不確実性への警戒感が改めて意識されている状況です。
日経平均も今週大きく下落する場面もあり、「もう株式投資はやめたほうがいいのではないか」と考えてしまう人もいらっしゃるのでは。ただこうした局面こそが、投資家としての真価が問われるタイミングでもあります。今後もこのような不確実でボラタイルな(値動きの大きい)相場が想定される不確実性の高い時代、いわゆる“VUCA(ブーカ)”時代において、株式市場の急落への向き合い方、そして中長期的な視点からの投資戦略について考察していきたいと思います。
VUCAとは?
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの英単語の頭文字を取った言葉です。トランプ関税など政治的な先行き不透明感、グローバル経済の複雑化、世界の分断、AIやテクノロジーの急速な進化などが絡み合って世界は、ますます先が読めない環境になっているといえます。株式市場も例外ではなく、ボラティリティは高まっています。不確実性の高い環境では予期せぬ出来事による損失が発生しやすくなります。「恐怖指数」とも呼ばれるボラティリティインデックス(市場の値動きを表すもの)は今週、目処とされる20を大きく上回り、50の水準を超えました。
過去の実績や経済指標だけでは将来を予測しにくくなっているなかで、投資家も従来の発想を見直す必要があります。過去を振り返ると、2007年の世界金融危機では50%ほどの下落に見舞われた市場ですが、1987年のブラックマンデーでは約30%、2000年のITバブル崩壊では約45%、2020年のコロナショックでは約20%と何度も急落を経験し、そのたびに回復してきましたが、市場の急落は必ずしも異常事態ではなく、また今後その頻度が高くなる可能性があります。
暴落は見直しのタイミング
株価が下がると、「これ以上損をしたくない」という恐怖が先立ち、保有株を手放してしまいたくなります。しかしその感情に流されてしまうと、相場が反発したときに恩恵を受けるチャンスを逃してしまいます。急落時には冷静さを保ち、自分の投資方針を見直すタイミングとして捉えることが重要です。
“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は「株式投資の極意とは、いい銘柄を見つけて、いいタイミングで買い、いい会社である限りそれを持ち続けること。これに尽きます」と言っていますが、いいタイミングという意味では、暴落時はバーゲンセールともいえるタイミングなのではないでしょうか。そうするとポートフォリオをより強化させるチャンスといえるかもしれません。
それでは、こうした不確実な時代において、どのような投資戦略が有効なのでしょうか。