はじめに

米国のトランプ関税に世界の金融市場が振り回されています。日経平均も3月末から下げ足を速め、大幅安となる日が多発しています。特に、4月7日は前営業日比で2644円安を記録。下げ幅は歴代1位の「令和のブラックマンデー」(2024年8月5日)、そして歴代2位の「ブラックマンデー」(1987年10月20日)に次ぐ大きさで、指数算出以来の歴代3位の下げ幅となりました。


トランプ関税による、日経平均の乱高下と市場の反応

4月8日には一転、前日比1876円高と大幅反発しました。1日の上昇幅としてはブラックマンデー翌日の急落の反動で上昇した1987年10月21日(2037円)に次ぐ歴代4番目の大きさでした。ところが9日には再び大幅安に。下げ幅は一時1700円を超え、前日に急反発した上昇分をほぼ吐き出すところまで売られました。

ところが10日(本稿執筆現在)には日経平均株価は急反発して始まり、上げ幅は一時2800円を超えました。トランプ米大統領が発動したばかりの相互関税の上乗せ部分について、一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表したことを受けた米国株の急反発に連れ高した格好です。

このように株式相場は乱高下を繰り返していますが、目先のボトム(底)はつけたとみてよいのでしょうか?

株価の底入れ判断は早計か?

日経平均の下げ幅は7日の急落時に一時、2900円を超え、2023年10月以来およそ1年5ヶ月ぶりに心理的節目の3万1000円を下回る場面がありました。7日の終値は3万1136円と「令和のブラックマンデー」の取引時間中につけた安値にほぼ並びました。株価だけを見ると、ほぼ底値をつけたように見えますが、これで底入れと判断するのは早計だと思います。

まずセリング・クライマックスは商いが膨らみます。確かに7日の商いは大きく膨らんで東証プライムの売買代金は概算で6兆9893億円と、約5ヶ月ぶりの高水準となりました。しかし、2024年夏の「令和のブラックマンデー」は約8兆円に迫る水準でしたので、少し足りないように思われます。

バリュエーション面はどうでしょうか。日経平均の予想PER(株価収益率)は7日には12.7倍まで下がりました。「令和のブラックマンデー」の時は13倍でしたから、さらにそれより割安水準まで売られたことになります。しかし、現在、株価の底入れの尺度として予想PERは機能しないでしょう。もとになる分母の予想EPS(1株当たり純利益)が、いったいいくらになるかわからないからです。

市場の動きのほうが圧倒的に速く、アナリストの業績予想の修正が追いついていません。実際に、QUICKコンセンサスの来期予想(すでに年度が替わっているので、実際には今期予想)はいまだに7%増益を示唆していますが、今後の下方修正は必至でしょう。

日経新聞は以下のように報じています。

「野村証券は25年度の東証株価指数(TOPIX)の1株あたり利益(EPS)予想を従来の前年度比7%増から同7%減に下方修正した。米関税の直接的な影響が7%、国内外の景気下振れの影響が7%、それぞれEPSを押し下げるとみる。」
(日本経済新聞 4月8日付朝刊「広がる業績不安、株連鎖安 日経平均2644円安、下げ幅歴代3位」)

記事にある下方修正はかなり対応が速く進んでいる例でしょう。しかし、株式市場はもっと深刻な減益を織り込んでいるように思われます。そして重要なことは、実際の景気・業績の悪化度合いが現段階では皆目、見当もつかないということでしょう。その不確かさ・不透明さを嫌ったリスクオフが株式市場下落の要因です。

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