はじめに

ニュースで年金についての議論が報じられるたびに、「将来、本当に年金はもらえるのだろうか?」と、不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本の年金制度は、現役世代が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てる世代と世代の支え合いの考え方で運営されています。

老後の不安を解消するために大切なことは、制度を正しく理解し、老後に向けた備えを始めることです。今回は、会社員が知っておくべき年金の基本と将来に備えるためのポイントをファイナンシャルプランナーが解説します。


年金の基本と平均受給額は?

第一号被保険者である自営業者やフリーランス等は、「国民年金(基礎年金)」である一階建て部分のみに加入します。令和7年度の国民年金保険料は1カ月あたり17,510円となっており、収入の多い、少ないに関わらず同額の保険料を納めることになります。そして、令和7年度の国民年金(満額)の受給額は、月約6万9千円(年約83万円)となっています。

これに対し、第二号被保険者の会社員が加入する公的年金は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の二階建て構造になっており、毎月定率の保険料を会社と折半で負担し、保険料は給料から天引きされます。また、厚生年金は現役時代の収入に比例し、厚生年金への加入期間が長く、その間の年収が高いほど年金額も増えます。

総務省統計局が公表する「家計調査報告(家計収支編) 2024年(令和6年)平均結果の概要)」によると、65歳以上で、夫婦のみの無職世帯の実収入平均額は月約25万円となり、65歳以上の単身無職世帯であれば実収入は平均で月約13万円となっています。

退職・転職・働き方の変更で年金はどう変わる?

会社員は厚生年金に加入しているため、自営業者やフリーランスと比べて老後の年金額は多くなる傾向にあります。しかし、退職や転職をすると年金の仕組みが変わる場合もあり、将来の受給額にも影響が出る可能性があります。ここでは、60歳で退職する場合、転職する場合、独立する場合の3つのケースに分けて解説します。

①60歳で退職した場合
老齢年金は、原則として65歳から受給開始となります。そのため、60歳で退職すると無収入の期間が発生する可能性があり、貯蓄を取り崩して生活する必要が出てくることが考えられます。このような状況を回避するために、健康なうちは無理のない範囲で働き続けることも一つの選択肢です。会社員として働き続け、一定の要件を満たせば、厚生年金に加入でき、将来の年金額を増やせるメリットもあります。

現在、企業には65歳までの雇用確保が法律で義務付けられています。厚生労働省の「高齢者雇用状況の報告(令和6年)」によると、全体の67.4%の企業が継続雇用制度を導入し、28.7%が定年を引き上げ、3.9%が定年制を廃止していると報告されています。これらの制度を活用することで、年金受給までの空白期間を埋めることが可能になります。

②転職した場合
転職をし、引き続き厚生年金に加入する場合、大きな影響はありません。ただし、給与が下がると、厚生年金の受給額は収入に比例するため年金額も減る可能性があります。また、退職から次の就職までにブランクがあると、その間の厚生年金の加入期間が短くなり、将来の受給額が減ることがあります。

転職先の企業が実施している年金制度(企業型確定拠出年金など)について事前に確認しておくことも重要です。企業によっては独自の年金制度を設けており、それによって将来の年金額が変わることがあります。

③独立した場合
会社員を辞めて自営業者やフリーランスになると、厚生年金から外れ、国民年金のみに加入することになります。これにより、将来の年金額が減ってしまう可能性があります。そのため、掛金が全額所得控除の対象となり、将来の老後資金を準備できるiDeCoを活用することも対策の一つです。

また、国民年金基金制度や小規模企業共済制度といった自営業者向けの制度を利用し、不足額を補う方法もあります。厚生年金に比べて国民年金のみでは老後の生活費が不足する可能性もあるため、自助努力による資産形成が不可欠です。

退職や転職、独立によって、ご自身の年金の仕組みが大きく変わることもあるため、働き方の変更に伴う影響をしっかりと理解しておくことは重要です。将来の安心した老後生活を実現するために、自分に合った年金対策を早めに検討しておきましょう。

年金はいくらもらえる? 気になる老後資金はお金のプロに無料相談[by MoneyForward HOME]