はじめに

毎月分配型で取り崩す必要はない

3つめの問題は資産の取り崩しの方法はなにも毎月分配型を使わなくても良いという点です。最近は資産寿命という言葉も支持されるようになってきており、運用を継続しながら少しずつ資産を取り崩す方法に注目が集まっています。

試算によると、65歳時点で2000万円の資産があれば、それを3%で運用し毎月8万円を取り崩しても資産は98歳まで尽きることはありません。まったく運用しなければ、85歳で資産がゼロ円になりますから、10年以上も資産寿命が延びることになります。

確かに毎月分配型の投資信託も普通分配であれば、試算通りの取り崩しができるのでしょうけれど、特別分配が行われてしまうとずいぶん早くにお金がなくなってしまいます。

またマーケットの状況によっては、毎月資金を引き出すことが心情的に非常に負担となってしまうこともあります。直近関税の問題でマーケットが大きく動いていますが、利益が出ていない時に資金を引き出すのは想像以上に悩み心理的な負担が大きかったとおっしゃるお客様もいらっしゃいました。

以上より、筆者は高齢期においては毎月決まった額あるいは決まった率で取り崩すことを自動化するのではなく、常に数年分の生活資金は預金などにおき、投資商品は余裕をもって解約するべきではと考えています。

「プラチナNISA」は、本当に理想的な高齢期のお金の置き場所なのか

実際今回のプラチナNISAの創設案の中で、「スイッチングができるようにする」という点は、評価しています。というのもNISAは一度購入した投資信託は、持ち続けるしか選択肢がありません。仮に全世界株式に投資をするようなファンドを若いころから積立てていた方が、年配になりマーケットの変動リスクを避け、債券への投資配分を多くした4資産均等型に変えて資金の取り崩しを行いたいと思ったら、一旦前者のファンドを売却して後者のファンドを買う必要があります。

非課税で売却できるメリットはもちろんありますが、投資枠があることで自由な売買ができないことが考えられます。そこで期待されるのがスイッチングです。これは銘柄の入れ替えなので、NISAの枠内で取引が完了するので効率的にポートフォリオ変更ができます。

高齢期の資産の取り崩しについては、筆者自身も検証が追いついておらず、まだまだ確信をもってお伝えできるステージには来ていませんが、プラチナNISAと銘打った方法が、必ずしも理想的な高齢期のお金の置き場所とはいえないのではないかと考えています。なによりも、「高齢者用のNISA」との表現が、ご本人の希望に添わない投資への誘導に使われないようにと願います。

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