決算分析のコツ
個人投資家で『月収15万円からの株入門 数字音痴のわたしが5年で資産を10倍にした方法』『数字オンチもへっちゃら! 文系女子の分かる!株の本』の著者・藤川里絵氏が、投資家にとって重要な投資判断材料となる決算について、事例をもとに分析する方法を解説。
コロナでノックアウト状態だった紳士服業界が浮上!? 中でも「AOKI」が頭一つ抜きでてる理由とは
パジャマスーツ、エンタメ事業が好調か
沈みゆく運命と目をかけていなかった紳士服業界が、もしかしたら2024年は注目セクターになるのかもしれない。そう感じたのは、5月1日に紳士服では業界2位のAOKIホールディングスが、24年3月期の通期予想の上方修正を行なったからです。
中古車買取販売「ガリバー」がサプライズな新年度予想、2024年は熱い年になる?
物価上昇による影響も
2023年は中古車業界にとっては苦難の年でした。中古車販売大手ビッグモーターが、事故車両の修理時に車を故意に傷つけ、損害保険各社に請求する自動車保険の保険金額を水増ししていたことが発覚。過度な営業ノルマなど社内の風土についても批判が高まりました。その影響で、中古車販売会社のイメージは一気に悪化し、業界全体が大打撃を受けました。2022年の中古車業界は、半導体不足で新車の販売が減少し、その影響で中古車の「タマ不足」が深刻化。2022年の国内中古車販売台数は前年比6%減でした。2023年は、新車の生産回復につれ、少しずつ「タマ不足」が解消され、中古車販売も回復しつつある矢先の出来事に、業界関係者はさぞやショックだったことでしょう。
地味な銘柄「三菱鉛筆」1年前から株価が1.7倍&増配を発表、業界1位「パイロット」に迫る勢いの要因は?
新NISA銘柄としても魅力的
約1年前にこの連載で取り上げた三菱鉛筆、地味な銘柄だけに市場でもそれほど話題に上りませんが、気づけばこの1年で株価は1.7倍にも上昇しております。参考記事:海外での売上が伸長!業績好調な老舗の筆記具メーカー・三菱鉛筆は過去最高益を超えられるのか? 紹介したときは、ちょうど2022年12月期の本決算が発表された直後で、売上高68,997(百万円)、前年同期比+11.5%、営業利益9,243(百万円)、前年同期比+22.9%と二桁の増収増益で着地とすばらしい実績でしたが、同時に出された新年度予想は、売上高70,500(百万円)、前年同期比+2.2%、営業利益9,500(百万円)、前年同期比+2.8%で、伸び率に物足りなさを感じていました。
上方修正の「ビックカメラ」下方修正の「ヤマダデンキ」何が家電業界トップ2の明暗を分けたのか
ともに家電に偏らない方針
桜の見頃の季節が過ぎ去り、一気に春めいてお出かけが楽しい時期となりました。街角には、ますます外国人旅行者の数が増えたように感じます。日本を訪れるにも、ちょうどよい気候なのかもしれません。インバウンド関連銘柄は、引き続き明るい見通しになりそうです。じつは、ビフォーコロナとアフターコロナでは、インバウンドの関連銘柄にも変化がありました。コロナ前は、インバウンドの花形であった家電量販店が、コロナ後には、期待したほど回復していません。その大きな要因は、家電を爆買いしていた中国人観光客数が戻っていないためです。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、コロナ前の2019年の中国人観光客の旅行消費額は17,704億円で全体の36.8%を占めていました。2023年は7,604億円と半分以下の消費額で、全体の割合も14.3%と落ち込んでいます。では、コロナ禍で家電量販店が大きなダメージを受けたかというと、じつは真逆でした。巣篭もり特需特需の恩恵で、過去最高益を更新する家電関連企業も続出しました。たしかにわたしも、コロナ中に、洗濯機と冷蔵庫を買い替えました。家にいる時間が長いため、暮らしを豊かにするも
迷惑行為から復活の「くら寿司」ともに好調な日本と北米どちらに投資をする?
株価の割安さを測るPERは日米で割高
2023年は、回転寿司チェーン店にとっては災難な年でした。1月に「スシロー」を運営する「あきんどスシロー」で、醤油ボトルや湯呑みを舐めるなど迷惑行為を行った動画がSNSでアップされ炎上。また、4月には「くら寿司」でも同様の事件があり、回転寿司チェーン店に対するネガティブな印象が日本中に広がりました。それまでわたしも娘たちと何度か地元のくら寿司に足を運んでいますが、その後は、なんとなく気が向かず外食の選択肢から除外していました。当然、投資対象としても監視から外していましたが、先日、たまたま目についたくら寿司の株価が、きれいに上昇しており、俄然興味が湧いてきました。
アフターコロナも好調のオフィス家具「オカムラ」「イトーキ」株価に開きがあるのはなぜ?
2社ともに上方修正をしているものの…
先日、オフィス家具のレンタル料が上昇しているという新聞記事をみかけました。食料品や日用品、宿泊費、光熱費などの上昇は、肌感としてもありますが、オフィス家具のレンタル料にまでインフレの波が襲いかかっているとは、考えが及んでいませんでした。記事によると、事業拡大にともなって人材採用を増やし、オフィス家具を増やす企業からの引き合いが多いとのこと。
食品メーカーで株価上昇の波に乗れていない「亀田製菓」決算で巻き返すもさらなる成長のカギとは?
鍵を握るのは、2022年に就任したCEO兼会長
2023年度は、食品業界の株価が堅調でした。業種別の騰落率は30%で、日経平均の28%を上回っています。2022年は、円安による原材料高、光熱費高、人件費高の三重苦で利益が伸び悩みましたが、2023年度は、価格転嫁に成功し、利益率が改善した企業が多かったためです。ただし、食品メーカーの中でも、株価上昇の波に乗れていない企業も一部あり、そのうちの1社が亀田製菓です。
「湖池屋vsカルビー」両社業績、株価ともに好調、投資家の選択は?
株式投資の真髄とは
2024年9月、ポテトチップス界のツートップ、カルビーと湖池屋について紹介しました。参考記事:カルビーと湖池屋…ポテトチップス界の2強、株価の動きに大きな差があるのは何故なのか?当時は、株価上昇率で比べると湖池屋が圧勝していましたが、この半年間で、カルビーが猛追しております。画像:TradingViewより「2023年9月の比較チャート」画像:TradingViewより「2024年3月の比較チャート」
日経平均2024年最大の下げの日に4%上昇した「ツムラ」、その理由は?
株価が伸びるか、低迷か
2024年に入って急ピッチで上昇してきた日本株。さすがにこのスピード違反を株式市場の神様が見逃すわけもなく、ここ最近は、大きく下落しています。2024年3月11日には、日経平均株価が一時1,000円以上下落する大幅安となりました。この日の東証プライム市場の値下がり銘柄数は1,398、値上がり数は232と、ほとんどが下げている全面安の様相でした。ところが、株式市場がどんよりした日にもかかわらず、4%上昇したのがツムラ(4540)です。ツムラといえば、みなさん思い浮かべるのはバスクリンではないでしょうか? 多くの日本人のバスタイムの質を上げてくれた立役者です。残念ながら、バスクリンなど家庭用品事業は2008年に売却しており、現在のツムラは、100%医薬品メーカー。中でも医療用漢方薬では国内シェア8割を握っています。「良薬は必ず売れる!」という信念で創業されたのが1893年。そこから資材、原材料不足が深刻化する戦時中の苦難を乗り越え、創業130年を迎えています。現在の時価総額は2,800億円程度で中型株に分類されます。ここのところの株式市場のテーマといえば、大型の高配当株か、生成AI関連で、
株価うなぎのぼりの衛星放送「スカパー!」、躍進の理由は宇宙事業への変態?
投資家が惹かれる「変態企業」の魅力
この企業、こんなことしていたの?かつてのイメージとまったく違うビジネスを展開し、なかにはそちらのほうが事業のメインプレーヤーとなることがあります。たとえば、富士フイルム。かつては、テレビCMでもおなじみ、カメラのフィルムが稼ぎ頭でしたが、今や、X線画像診断や内視鏡、創薬などの医療分野がメイン事業です。目薬で有名なロート製薬は、「肌ラボ」などスキンケアセクターが急成長し、今やこちらが売上の70%程度を占めています。企業が事業内容を変化していく「変態企業」は、投資家としても非常に魅力があります。もちろん変態していくのは、それほど簡単ではありません。新規事業を開拓し、成長させていくには、相当の先行投資が必要なので、既存事業の足枷になります。それでも果敢に取り組み、成功させるのは、経営者の決断力、実行力、先見性や、それについていける従業員が必要で、一筋縄ではいきません。だからこそ、変態を成功させた企業に投資家が惹かれるのです。
高まるグミ人気で予想を超え好調の「カンロ」決算で注目した2つの数字とは?
グミ市場が驚きのノビ
先日、飴を買おうと駅構内にあるコンビニに寄ったところ、選択肢が非常に少ない! あまり触手が伸びず、ほかに代替品はないものかと物色すると、グミの品揃えが異常に充実しているのを感じました。専用の吊り棚にずらりと並んだグミの数々。とくにハード系のグミが多いように感じます。前々から、近所のコンビニでもグミ売り場の拡大は気になっていましたが、さらにグミ人気は高まっているようです。コンビニのグミ売り場がどんどん拡張していることからも、グミ市場が大きくなっていることがわかります。調査会社のインテージ調べによると2023年の販売金額ベースでは972億円で、前年から24.1%の伸びとなっています。その一方で、縮小しているのがガム市場です。2021年にグミの販売金額が、ガムをはじめて上回り、その後は差が開く一方。コンビニのガム売り場はどんどん小さくなり、グミとは対照的な扱いです。グミ人気が高まった理由には、コロナで自宅にいることが増えたこともあげられています。仕事や勉強をしながらかみ続けられ、ストレス解消にもつながるとのこと。ガムは、口臭対策で噛む人が多いため、外出機会が減りニーズが落ちたようです。いった
アシックスとミズノが圧倒…スポーツブランド5社の明暗を分けた、投資家が注目したポイントとは?
1年前はスポーツメーカーすべてが好調に見えたが…
ちょうど1年ほど前、この連載でスポーツブランド5社(アシックス、ゴールドウィン、デサント、ヨネックス、ミズノ)の業績が好調で株価も堅調だという記事を書きました。その株価の動向を確認したら、驚くほどに勝ち組と負け組が、はっきり分かれていました。画像:TradingViewより1年前と比べてアシックスとミズノは80%以上、上昇しているにもかかわらず、ほか3社はマイナスという悲惨な状況。同じスポーツブランドでも、何を買うかで投資成績は大きく変わってしまう結果となっています。株価の推移をみると、2023年5月あたりから少しずつ勝ち組、負け組の騰落率が乖離し、その後8月あたりからきっぱり分かれた感じがします。ちょうど決算発表時期ですね。アシックスは12月決算で、ほか4社は3月決算です。となると、5月に発表された24年3月期の新年度予想にヒントがあるかもしれません。
少子化なのに過去最高益を更新、株価も上昇トレンドの早稲田アカデミーの強さとは?
「自動化」がカギ
銘柄物色をする際には、どうしても自分の関心・興味が向かうフィールドのものに目が行きます。個人投資家ですので、それでなんら問題ありませんが、ときどきまったく興味がない分野でも、アンテナに引っかかることがあります。わたしにはふたりの娘がいます。東京生まれの東京育ちですが、受験デビューは二人とも高校生。お受験熱が高い地域においては、マイノリティーに当たります。そんなこともあり、投資対象としても学習塾はほとんどノーチェックでした。市場全体を見ても、少子化が進行する日本で学習塾経営というのは、あまり旨みがないのではないか、という読みもあります。実際、大学受験分野では、少子化に加え、推薦入試などの年内入試が入学者の過半に至るなど、一般入試離れが著しく、いわゆる大学受験対応の予備校はかなり厳しい状況。文部科学省の学校基本調査にあるデータによると、1990年に20万人近くいた予備校生徒数は、今では約3万人に激減しています。ところが意外にも堅調なのは、もう少し下の世代を対象とした学習塾です。コロナ禍を契機に私立国立中学への熱が高まり、23年の首都圏中学受験者数は5万2,000人と過去最多を更新しています
売上高は過去最高の予想、群を抜いた強さを見せる「オリエンタルランド」に死角はないのか
来場者はコロナ前の8割に
手放さなければよかった!と見るたびにため息をつく銘柄があります。10年で10倍以上株価が上昇しており、現在もそのトレンドは堅調な超超優良株・オリエンタルランド(4661)です。コロナショックで大きく株価が下落したとき、これは一時的な下落であると確信を持って拾いました。当時は、4分の1に株式分割する前で、一株12,500円だったことを覚えています。そのまま保有していたら、ざっくり2倍。100万円以上の利益が取れたと皮算用せずにはいられません。
決算翌日に株価は急上昇、赤字企業「マネーフォワード」が好調の要因は?
上場来、時価総額は8倍以上、売上高は10倍以上も…
「家計管理は何でされていますか?」 5年くらい前からセミナーで参加者の方によく聞く質問です。キャッシュレスの浸透度と比例して、家計簿アプリなどデジタルで管理する人の割合が高まりつつあります。わたしは15年ほど前から家計簿をつけていましたが、8年ほど前からデジタル家計簿に移行しました。そのきっかけはマネーフォワードMEに出会ったことです。それまでも簡易型の家計簿アプリは使用したことがありましたが、いまいちピンときませんでした。ところがマネーフォワードME(当時はまだマネーフォワードという名称でした)は、それまでの家計簿アプリではなかった、フロー(月々の収入&支出)とストック(預金、株式、投資信託などの資産状況)の両方が一括管理できる画期的なものでした。最初は無料ユーザーでしたが、すぐにプレミアムサービスユーザーに。プレミアムといっても月額500円というお値打ち価格。登録しているクレジットカードで支払いすれば、自動的に支出は記録されるので、アナログ家計簿のように記入漏れなどありません。わたしの場合は、細かい日々のお金の出入りよりも、資産管理を重視しています。そのためのツールとしてマネーフォ
不正のニュースでそっぽを向かれた中古車業界、優等生銘柄「ネクステージ」の決算はどうだったか
長期にわたって株価は上昇トレンドだったが…
この連載の初回で優等生銘柄として紹介した中古車販売のネクステージ。2023年は中古車業界で衝撃的な不正のニュースが流れ、業界全体が消費者からも投資家からもそっぽを向かれました。当社においても、「厳しい販売件数のノルマを達成するために保険の不正請求を行なっていた」などの報道がなされ、今までの優良企業のイメージが一気に崩れ去りました。実際は、個人的な社員の不適切な行動であり、その都度、該当社員には処罰を与える処置をとっており、企業全体の風土ではなかったことが判明しました。それでも傷ついた信頼を取り戻すのはなかなか大変です。参考記事:好決算なのに売られる理由—数字オンチでもわかる、決算で見るべきポイントとは?
コロナのダメージを引きずるフィットネスジム、そのなかでも「女性だけ」のカーブスが好調なのはなぜ?
女性だけに振り切る戦略勝ちか
年末年始の帰省中、80歳手前の母が、連日「カーブス」に通っていました。カーブスは「女性だけの30分フィットネス」と明確なコンセプトを持つスポーツジムで、わたしの母はもうかれこれ10年近く通っています。さすがにコロナ中はお休みしていましたが、今は再開してふたたび日々の習慣となっているようです。2024年の注目投資テーマとして、フィットネスジムを挙げている市場関係者がいました。リオープン銘柄としては、まず飲食、小売、エンタメなどが先陣を切りましたが、それらのセクターはやや一服し、ここからはフィットネスジムが追い上げてくるとの予想です。たしかに、コロナ中に蓄えた脂肪をそろそろなんとかしたいとジム通いを再開する人は周りでもちらほら。かくいうわたしも、コロナ前に通っていたゴルフスクールを再開したばかり。身体を鍛えたい、運動したいモードの大人は確実に増えていますね。
過去最高売上、最高利益を更新予想のアダストリア、それでも「いま株を買うのは難しい」のはなぜ?
12月の月次売上に注目
株式市場では、2月決算銘柄の第3四半期決算発表が続々と行われております。2月は飲食、ドラッグストア、アパレルなど消費者として売れ行きなどを実感しやすい銘柄が多いため、日々の肌感と業績が一致しているかどうかの確認作業にもなります。年度の終盤である第3四半期決算は、良くても悪くても株価はすでに織り込み済みのことが多く、そこから株価が急騰することはあまりありません。投資家の意識は、その先の新年度の業績がどうなるかに向かっていますので、足元の業績への評価がダイレクトに株価に反映しなくなります。そんな事情もあって、第3四半期決算後に株を買うのは難しいのですが、期初から継続的に業績がよく、今後も持続しそうな期待が持てるのに、決算後に株価が下落した場合は、そこが買いチャンスとなることもあります。