決算分析のコツ
個人投資家で『月収15万円からの株入門 数字音痴のわたしが5年で資産を10倍にした方法』『数字オンチもへっちゃら! 文系女子の分かる!株の本』の著者・藤川里絵氏が、投資家にとって重要な投資判断材料となる決算について、事例をもとに分析する方法を解説。
過去最高売上、最高利益を更新予想のアダストリア、それでも「いま株を買うのは難しい」のはなぜ?
12月の月次売上に注目
株式市場では、2月決算銘柄の第3四半期決算発表が続々と行われております。2月は飲食、ドラッグストア、アパレルなど消費者として売れ行きなどを実感しやすい銘柄が多いため、日々の肌感と業績が一致しているかどうかの確認作業にもなります。年度の終盤である第3四半期決算は、良くても悪くても株価はすでに織り込み済みのことが多く、そこから株価が急騰することはあまりありません。投資家の意識は、その先の新年度の業績がどうなるかに向かっていますので、足元の業績への評価がダイレクトに株価に反映しなくなります。そんな事情もあって、第3四半期決算後に株を買うのは難しいのですが、期初から継続的に業績がよく、今後も持続しそうな期待が持てるのに、決算後に株価が下落した場合は、そこが買いチャンスとなることもあります。
業績絶好調のしまむら、株価上昇率がイマイチなのは「優等生」だから?
コロナ禍でも他社を圧倒する強さ
2月8月期決算銘柄の先発隊が、そろそろ決算発表を行なっています。この部隊には小売銘柄が多いため、個人投資家さんにとっても馴染みが深い銘柄揃いです。2023年は、リオープン、インバウンドの恩恵で、小売銘柄にとっては追い風が強く、業績の大幅改善、それに伴う株価上昇が多く見られました。この連載では、小売の代表としてアパレル銘柄を何度か紹介しましたが、アパレル業界全体が2023年は明るい1年だったのではないでしょうか?取り上げたアダストリア(2685)の株価はこの1年で80%上昇、三陽商会(8011)はほぼ2倍になっています。【参考記事】良品計画とアダストリア…明暗分けたアパレル決算、勝ち・負けの境目はどこにあるのか?バーバリー・ロスで倒産危機…なぜ三陽商会は業績予想を上方修正するまでに復活できたのかそんな中、株価上昇率で、少し見劣りしているのはしまむら(8227)です。2023年の株価上昇率は21%。日経平均株価は27%ですから、市場の平均を下回っています。しかし、業績が悪いわけではありません。今期2024年2月期においては、前期に続いて過去最高売上、最高利益を更新予定ですから、むしろ絶好調
秋まで株価が大躍進のラーメン株、御三家の順位に変動。業績は好調なのに株価が下げ止まらない原因とは?
為替の影響か
ここのところ街に出るとあちらこちらで行列ができています。コロナ前によく見た風景が、ふたたび戻ってきた感じです。とくに目立つのはラーメン屋さん。原宿にある某有名ラーメン屋さんの前には、お昼をだいぶ過ぎたアイドルタイムに軽く30人以上が並んでいました。並んでいるのは、アジア圏からの旅行者が多く、インバウンドの恩恵をしっかり受けているようです。ラーメン系企業については、8月にアップした記事「株価が大躍進したラーメン株、御三家に伸び代はまだあるのか?」で取り上げています。2022年からラーメン銘柄は好調で、2023年の8月時点ではかなり株価も上昇していたのですが、ここからまだ株価が伸びるのか? 8月に公開した記事では「ラーメンが伸びるのは困りますが、株価はまだまだ伸びてほしいですね」とドヤ顔で締め括っています。実際その後はどうなったのでしょう?
コロナから復活のモスバーガー、スポットライトを浴びる「出遅れ銘柄」になれるか
2018年に起こった事故とは
ときどき無性に食べたくなるものがあります。そのひとつがモスバーガーのテリヤキチキンバーガーです。大学進学をきっかけに、東京に出てきてはじめて食べたテリヤキチキンバーガーの美味しさは、今でも覚えています。モスバーガーは、ファーストフードの中でも手作り感が強く、お値段は少しお高め、学生時代はちょっとしたご褒美ごはんの位置付けでした。ほかのハンバーガーチェーンと比べると、挟まれているレタスにボリュームがあり、栄養バランスがよいのも魅力。ただ、株式市場で、モスバーガーを運営するモスフードサービスが話題になることは、ほとんどありません。業界1位の日本マクドナルドHDは決算発表のたび報道されますが、業界2位のモスフードサービスに対する注目度は残念ながら低いと言えます。
コンビニジム「chocoZAP」が話題のRIZAP、株式市場のスター銘柄に戻れるか
株価は2017年の高値から一時は10分の1に
最近、身近な友人の中で、「chocoZAP」に通う人が増えています。「chocoZAP」は、RIZAPグループ(2928)が運営する会員制のトレーニングジムで、”初心者でも通いやすいコンビニジム”がコンセプトです。通常のジムとの違いは、トレーナーや受付がいないこと。無人のジムに、初心者でも使いやすいトレーニングマシーンが設置されており、月額2,980円(税抜)で利用できます。服装は自由なので、仕事の合間にサクっと立ち寄り、そのままの服装で10分程度運動していく人も多いそう。また、セルフエステやセルフ脱毛の美容機器が設置されており、わたしの友人は、むしろジムよりそちらが目当てのようです。
決算発表後の急騰を狙う「決算プレイ」を避けて、低リスク高リターンを狙う”後出し作戦”
決算発表チェックの順番をおさえる
決算がよいだろうと先回りして、発表後の急騰を狙う決算プレイや、決算発表翌日に飛びつく好決算キャッチプレイは、そこそこ経験がある投資家にとっても、なかなか思い通りにならないものです。目論見が外れたときのダメージは、金額的にも精神的にも大きいため、わたし自身はほとんどチャレンジすることはありません。しかし、決算という材料が、その後の株価を押し上げることは多く、上手に捉えれば、資産運用の効率をぐいっと底上げしてくれるので、利用しない手はありません。そこでわたし自身が行っている比較的リスクが少なく、好リターンを取りやすい”決算後出し作戦”を紹介しましょう。
市場縮小が止まらないカメラ業界…なのに高値更新を続けるレンズメーカーがある?
偏見を捨てることで出会える銘柄
東京オリンピックからずっとウォッチし続けているマイフェイバリッツ銘柄があります。スマホカメラの発達で、市場のシュリンクに泣くカメラ業界で、むしろ逆に業績の成長が止まらない交換レンズメーカー・タムロン(7740)です。カメラといえば、キヤノン、ソニー、ニコンが王道なので、タムロンを知っている方は、プロもしくはハイレベルのアマチュアさんに限定されるかもしれません。わたしもカメラ自体にはそこまで興味がなく、スマホカメラで十分ですが、知り合いのカメラマンさんは、タムロンのレンズを絶賛しておりました。そもそもわたしが当社に目をつけたのは、東京オリンピックのカメラマン席でソニーのカメラがやたらと目立ったからです。オリンピック競技の写真は、瞬間を捕らえる必要があるため、フォーカスの精度が高いこと、連写の性能がよいこと、またシャッター音がしないことなども重要だと思われます。かつてオリンピックのカメラ席では、キヤノンとニコンの2大メーカーが鎮座しておりましたが、ソニーのカメラが急増したことを不思議に思い調べたところ、タムロン製のレンズが使われていることを知ったのです。
過熱する即食市場「ニチレイ」は絶好調、「カニカマ」で紀文食品は黒字に
健康需要で「練り物」人気も
先日、何気なくコンビニの冷凍食品売り場を見て、その充実ぶりに驚きました。かつて冷凍食品といえば、ミックス野菜、フライドポテト、ハンバーク、コロッケ程度だったと思いますが、今時の冷凍食品は、ペスカトーレ、ボロネーゼ、ビビンバ、まぜそば、若鶏のグリル…と、お弁当の一品というよりも、しっかりメインのおかずとなりそうなものが増えています。昨今、忙しい共働き世帯や、家での調理が億劫になりがちな高齢世帯、単身世帯の増加により、簡単で即食べられる冷凍食品がかつてないほどに脚光を浴びているようです。たしかに、コンビニやスーパーの冷凍食品売り場は以前より拡大していますし、冷蔵庫のほかに、冷食専用の冷凍庫を購入する人も増えています。冷凍食品の味や品質が劇的に向上したのも冷食人気を過熱させています。2022年の8月に松屋が銀座店の地下2階に冷凍食品売り場「ギンザフローズングルメ」を開設したのは、冷食がグルメ食品であると認識させられる出来事でした。さらに販売経路の変化も冷食の拡大を後押ししています。街角で冷凍食品の自動販売機を見かけませんか? わたしがよく行く餃子屋さんの店頭にも餃子の自動販売機が置いてあり、
コロナで株価が3分の1になったJINS、復活の兆しも気になるのは上場を控える強力なライバル
斜陽産業のメガネ業界、その行方は?
わたしが、株式投資でいちばん最初に手応えを感じたのは、ジンズHD(3046)の売買でした。株式投資をはじめてまもない2012年頃、原宿でJINSの路面店を見かけました。それまでメガネといえば、数万円レベルの高級品で、作るのにも時間がかかるちょっとお堅いイメージの商品でしたが、その原宿の店舗は、Tシャツで若者が接客する非常にカジュアルなものでした。また、フレーム+レンズで2,980円といったとてもリーズナブルな価格で、数時間でメガネができるという手軽さは、メガネ業界の常識を覆すものでした。さらに、それまでは、視力の弱い人だけをターゲットにしていたメガネ業界ですが、JiNSは、パソコンのブルーライトから眼を守る”PCメガネ”という新しいカテゴリーメガネを提案し、視力が弱くない人までもメガネユーザーにしてしまう大革命を起こしたのです。そんな変化を好機ととらえ、ジンズ株を購入し、1年で3倍近くの利益を取ることができました。あのときの興奮は今でもはっきりと覚えています。その後、同様のビジネスモデルが蔓延し、メガネ業界は競争激化で、当社の業績も低迷します。またコロナ禍では、外出控えによる需要の落ち
「値上げしない」宣言のサイゼリヤがストップ高! 驚きの好決算の秘密とは
国内事業はお荷物
おもな小売企業の決算がひと通り出揃いました。全体的には、悪くないといった印象ですが、ひときわ好調が目立ったのは、比較的お値段控えめの”庶民の味方”企業でした。ドラッグストアはおおむね全体的に好調でしたし、ユニクロを展開するファーストリテイリングも過去最高益の着地でした。値上げ疲れで節約志向が顕著に見える結果です。そんな中、頑なに値上げを拒んだサイゼリヤ(7581)が、驚きの好決算で注目を集めました。前回の第3四半期決算後に、この連載で取り上げたときは、他社が値上げして、消費者はそれを受け入れつつあるのに、値上げをしないサイゼリヤは大丈夫? 通期予想に対する進捗率もあまりよくなく、予想値未達の心配も、とやや懐疑的な記事でした。まずは2023年8月期の決算を見てみましょう。
バーバリー・ロスから復活の三陽商会、サプライズ決算でストップ高!要因はセール価格での販売減少か
上期予想を3.6倍も上振れ
2月決算銘柄の第2四半期決算がおおむね出揃いました。発表時期の相場環境は最悪で、アメリカの金利の上下によって、日経平均株価は、1日で500円以上も上げたり下げたりで大きく振り回わされました。そんな中での決算発表なので、決算内容よりも、全体相場につられて株価が動く銘柄が多かったように思います。そんな中、第1四半期決算発表後にこの連載で取り上げた三陽商会(8011)が、異彩を放っています。10月6日に発表された2024年2月期第2四半期決算を見てみましょう。
「匿名宝飾店」が話題となった4℃、ジュエリーより好調な事業とは?
婚姻数の減少でブライダル店舗は苦戦
ブランド名を明かさず「匿名宝飾店」と大きく描かれた店舗が、原宿に2023年9月8日(金)から24日(日)の期間限定で出店していました。期間中の累計来場者数は5,500人と大盛況で、整理券を配るほどのにぎわい。期間中の20日(水)に覆面ブランドが「4℃」であると明かされました。「4℃」といえば、『19歳の誕生日にプレゼントされると幸せになれる』という都市伝説が有名です。わたしが19歳のときにもすでに囁かれていましたので、かれこれ○十年以上、語り継がれており、これはある意味かなりの知名力です。ただ一方で、それを揶揄するような言葉もSNSなどで散見されることもあり、憧れのブランドとは言えなくなっているかもしれません。そんな状況を打破するための施策が今回の「匿名宝飾店」でした。来店者が店を出る際に初めてブランド名を明かした上で、アンケート調査を行ったところ、83%が「4℃のイメージが変わった」、78%が「正体は意外だった」と答えたそうです。
あの「鳥貴族ショック」から6年、インフレによる値上げは再び悪夢となるのか?
「世界の鳥貴族」へ懸念となるのは…
「何食べたい?」と聞かれていちばん無難な答えは「焼き鳥」ではないか、とわたしは思っています。基本的には庶民の味方ゆえ、高級焼き鳥店でも上値が限定されること、また庶民派のチェーン店であっても、味に大きなハズレはないこと、つまり店舗による味のブレも、価格のブレもそれほど大きくないので、みんながそこそこ満足できる確率が高いのです。また、少人数でしっぽりいただいてもよし、大人数でワイワイ楽しむもよし、いろんな意味でキャパの大きい食べ物だと思います。ということで、半ば強引ですが、今回は焼き鳥チェーン店の大手、鳥貴族ホールディングス(3193)の決算をチェックしたいと思います。
減益予想から一転、なぜ【築地銀だこ】は年初来高値を更新できたのか
営業利益と経常利益、投資家はどちらを見るべき?
株式投資家の好物といえば、”減益予想から一転増益!”といった、ネガティブからポジティブへクルリと予想が反転する銘柄です。減益予想ゆえ、株価もパッとせず、だれもがスルーしていたところで、増益予想に転換のニュースが出れば、いきなりスポットライトが当たり、株価急騰となることが多いものです。直近の例ですとホットランド(3196)、たこ焼きのチェーン店「築地銀だこ」を主に展開する会社です。たこ焼きといえば、庶民の食べ物代表と言ってよいでしょう。大阪の家庭だと、たこ焼き機が自宅にあると聞きますが、東京在住だと外出時に食べるか、デリバリーするかの二択です。わが家でも、娘たちのリクエストで、お届けしてもらうことがあります。わたしの周りでは、店舗に通う友人も多く、せっせとポイントを貯めているファンも多数存在します。
カルビーと湖池屋…ポテトチップス界の2強、株価の動きに大きな差があるのは何故なのか?
一方は上場来高値を更新も…
最近、コンビニに行くとついつい買ってしまうのがポテトチップスです。もともとわたしは、それほどポテチ好きではありません。それでも躊躇なくカゴに入れてしまうのは、キャッチーなネーミングのせい。「神のり塩」「美食の岩塩」「通の黒胡椒」など、大人の食指が動いてしまうのです。
ポケモンも人気を後押し!トレーディングカードの恩恵を受けた企業は
意外にも今期予想は減益…なぜ?
今年の春、トレーディングカードの人気が白熱しているというニュースを目にしました。トレーディングカードは、趣味でコレクションしたり、交換、対戦ゲームなどに使われます。人気が高いのは、ポケモンなどのキャラクターや、スポーツ選手のカードで、YouTubeなどで紹介されたことをきっかけに、世界中で注目が集まっています。通常は高い場合でも定価は1枚あたり100円未満が多いですが、希少性の高いカードは、1枚で数億円という、信じられない値段がつくこともあるようです。今年の8月には、ポケモンの世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023」が初めて日本で開催され、歴代のポケモンカードが大集合し、かなりの活況だったようです。一般社団法人日本玩具協会によると、「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は、2021年度は前年比46%増の1,782億円、2022年度は前年比32%増の2,349億円と2桁成長を続けており、当然、恩恵をうける企業の業績にも期待ができそうです。
値上げで販売数量が減少…伊藤園の決算から読み解く、飲料業界の苦難と工夫
翌営業日に株価は12.3%上昇
連日最高気温が30度を超える真夏日が、2ヵ月以上続くという異常な暑さの中、外出時にはかならず自動販売機で冷たい飲み物を買い求めました。数年前は、ソルティ系の少し甘みがある飲料を好んで飲んでいましたが、その甘さが、かえって喉を渇かせる気がして、今年は麦茶一択で夏を乗り切りました。子どもの頃の夏の飲み物といえば、冷蔵庫でキンキンに冷やされた麦茶だった、という方も多いのではないでしょうか? 毎晩、母親がやかんで麦茶を沸かして、一晩熱を冷ましたあとで冷蔵庫に入れる、という一連の作業は夏の風物詩でもありました。そんな手間を取らずとも、どこでも麦茶が買える時代。わたし同様に、駅のホームの自販機で麦茶のボタンを押した人は多いのではないでしょうか?
EV自動車の関連銘柄が好決算で通期予想も上方修正、目利きの投資家は先回りして仕込めたのか?
前年度の減収減益から急回復した事業が牽引
夏の決算発表シーズンが、ひと段落つきました。この時期は、海外投資家がサマーバケーションで不在であったり、株価を動かす材料が乏しいこともあり、“夏枯れ相場”と言われます。確かにここのところ、売買代金は3兆円割れが続いており、株式市場も夏バテ気味のようです。ただし、個人投資家としては、今がいちばんの仕込みどき。決算発表期間中は、目を通す余裕がなかった決算資料をじっくり読み解くチャンスです。今回、好決算だった中で印象に残ったのは、EV自動車関連銘柄です。EV自動車は、目新しい投資テーマではなく、数年前から折に触れてスポットライトが当たっていますが、いまいち持続力がありません。その要因として、日本でのEV自動車の販売比率は1.71%と小さく、まだまだ利益を生みだす成長ドライバーとなっていないことです。とはいえ、世界中で脱炭素化が叫ばれ、中国を中心に急速にEVシフト化が進んでおり、不可逆的であることは間違いないでしょう。投資家としては、この大きな投資テーマにいち早く乗っかって資産を築きたいものです。