はじめに
楽天証券は、5月15日に同社のiDeCoラインナップから、9本の投資信託を除外する旨を発表しました。いきなりの発表に、戸惑ったり、驚いたりしている方も少なくないようです。今回は、除外とはなにか、これからどうしたら良いのかなどを解説します。
iDeCoの商品数は35本以内にしなければならない
運用商品の除外のお話をする前に、少々iDeCoの歴史におつきあいいただく必要があります。iDeCoは個人型確定拠出年金として、今ではたくさんの方が利用していますが、これは2017年1月に公的年金加入者であれば基本的にだれでもiDeCoに加入できるように法律が大幅に拡大されたことによるものです。
それ以前のiDeCoは、自営業者とお勤め先に企業年金がない会社員のみが対象で、iDeCoという愛称もありませんでしたし、扱っている金融機関もごく限られており「知る人ぞ知る」かなりマニアックな制度でした。
当時奮闘していた金融機関のひとつであるSBI証券のiDeCoには選択できる商品が67本もありました。アクティブファンドも多く、加入者の中にはiDeCoでそれらのファンドを買うと購入手数料が0円になるし、税制優遇もあるからと、好んで積立をしている方もいました。
限られた方しか利用していなかった個人型確定拠出年金ですが、2017年からは加入資格者を企業年金がある会社員や専業主婦などにも広げることになりました。それに伴い、多くの金融機関がiDeCoを取り扱う運営管理機関として参入し、手数料の引き下げ競争も起こりました。
一般の方はあまりご存じではないかと思いますが、2018年5月に確定拠出年金法の一部が改正され、iDeCoの商品数は35本以内にするように決められました。あまりに投資商品の数が多いと投資に不慣れな方は選べなくなるだろうという配慮からです。
すると、SBI証券のiDeCoには67本もの商品がラインナップされているわけですから、半数程度まで商品数を減らさなければならなくなったのです。このプロセスのことを「除外」といいます。
プランから商品が除外されると、すでにその商品を保有している場合はそのまま運用のみを継続することは可能ですが、新規の買い付けはできなくなります。当然、投資家から除外をしても良いかの許可を得なければならず、SBI証券は納得感のある理由の提示も含め必要書類の取り付けに動かなければならなくなりました。
その頃同時に、インデックスファンドへの関心が高まったり、信託報酬に対する投資家の目が厳しくなり多くの投資信託がコストを引き下げたり、低コストのインデックスファンドが多数登場したりしました。
するとSBI証券は、除外の手続きが進行中のもともとのプランを「オリジナルプラン」と名付け、2021には新規加入の受付を終了し、低コスト商品を多くそろえた「セレクトプラン」を発表しました。67本もの運用商品を半分まで減らす作業の大変さ、そして投資家の低コストファンドへの期待などもあり、競争力のある新プランへと舵を切ったのではないかと考えます。
このように、iDeCoの運用商品が35本に上限を設定されたことにより、運用商品を追加したい場合は、かならずなにか別の商品を除外しなければならない宿命を負うことになったのです。
楽天証券はなぜ除外した?
さて、楽天証券のお話に戻ります。今回楽天証券は、「マーケットの動向やファンドトレンドの変化(信託報酬の減少や投資対象の拡大など)は日々起こっており、同じラインアップを維持することが、お客様の長期的な資産形成に最適とは限りません」そのため「定期的に取扱商品のモニタリングを実施し、マーケットやファンドトレンドの変化に応じて、ファンドの入れ替えも定期的に行う予定です」として9本の商品を除外対象とした理由を述べています。
この案内は楽天証券のホームページに掲載された他、iDeCoの加入者にもメールで送られています。加入者の中で何かしらの対応が求められるのは、2025年3月31日時点で除外対象の運用商品を保有または配分指定、預替え(スイッチング)により購入の指図をされている方です。
該当する方は、現在お持ちの投資信託が除外されてしまうと今後新規の買い付けができなくなってしまうので、6月30日までに「回答書」にてご意志を伝える必要があります。
除外を希望しない場合、回答書にて「除外に同意しない」とし、返信します。3分の2以上の方が除外に同意しなければ、今回の提案は撤回され今まで通り新規の買い付けが可能となります。もし、3分の2以上の方が同意をすると、その投資信託は8月1日以降新規買い付けができなくなり、代替の運用商品の指図をご自身で行う必要があります。なお、除外に賛同する方は、回答書での返信は不要です。