はじめに

決算が総合利回り戦略に不可欠な理由

次に、足元の決算で業績トレンドを確認する意義についてお伝えさせてください。

いかに総合利回りが高くとも、業績が悪化していれば配当の維持や優待の継続には懸念が残ります。そのため、「現時点での決算」を精査することは、利回り戦略においても不可欠といえます。

特に注目すべきは、増収増益かどうか、それがどのくらい続いているのか。長期投資の場合、5年ほどの流れは見たいところです。さらに、配当性向の持続可能性(過剰還元か健全還元か)、キャッシュフロー計算書(営業CFが黒字であるか)、自己資本比率や現預金残高など財務健全性はチェックすべきでしょう。例えば、2025年3月期の決算で増収増益かつ配当増額を発表した企業は、実際に株価が底堅く推移する傾向が見られます。これは、市場が「配当の将来性」に信頼を寄せている証左でもあるでしょう。加えて、「配当据え置きだが減益幅は想定内」といったように、市場の期待値と実績の差分から企業の対応力を測ることも重要といえるでしょう。

図

成長ストーリー転換期の投資チャンスの見極め方

株式市場において、企業の成長ストーリーが大きく転換する局面には、往々にして投資のチャンスが潜んでいるといえます。赤字や低収益に苦しんでいた企業が、構造改革や事業ポートフォリオの見直しを経て黒字化を果たし、株主還元の一環として配当や、新たに株主優待制度を導入するケースは注目できるでしょう。連続赤字や減収から脱して営業黒字を回復した直後、不採算事業の撤退や固定費削減により損益分岐点が改善された段階、新規事業・成長分野の収益化が見え始めた局面などが考えられるため、企業が収益構造に自信を持ち始め、対外的にも財務の好転を発信するサインと読み取れることもあります。

回復基調での優待新設事例

例えば、スマートフォンアプリの企画・開発を行う東京通信グループ(7359)は、5月14日に発表した2025年12月期第1四半期(1-3月)の連結経常利益が前年同期比2.3倍の4,100万円に拡大。営業利益は前年同期の9,600万円の損失から5,500万円の黒字に転換し、売上営業損益率も大きく改善しました。

そして翌週5月20日に、2500株(25単元)以上を1年以上継続して保有する株主に、年間合計3万円分のAmazonギフトなどのデジタルギフトが提供される株主優待制度の新設を発表したことで、株価が前日終値298円から終値363円に急騰し、ストップ高となりました。総合利回りは約6.06%となり、4%を大きく超える高水準です。このように優待の導入は回復したキャッシュフローを長期目線で分配する意思の表れと市場に捉えられる面もあると考えます。

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