はじめに
ユニクロとの違いが、しまむらの強さを際立たせる
「低価格・高品質」のアパレルと聞くと、ユニクロを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、両社のビジネスモデルはまったく異なります。
ユニクロはSPA型で、素材の開発から生産、販売までを一気通貫で管理。グローバル展開を視野に、ヒートテックやウルトラライトダウンといった定番商品を大量生産・大量販売するモデルです。店舗も都市部中心で、世界中のどこでも同じ商品が買えることが大きな特徴です。
一方、しまむらは「分散型・現場主導」が基本。PBも扱いますが、仕入れ商品やキャラクター商品、季節商品など、多品種・小ロットでの構成が中心。地域性を活かした商品展開や売り場づくりで、近隣住民の“日常着”ニーズに応えています。
つまり、「効率化とグローバル最適解」のユニクロに対し、「柔軟性と地域最適化」のしまむらという違いがあります。これは投資家にとっても重要な視点で、しまむらの方が為替や海外情勢の影響を受けにくく、国内市場に特化した安定性を持っています。
さらに高値を狙えるか? 今後の注目ポイント
足元の株価は、1万円を少し割っているものの、依然として高値水準にあるため、再度の株式分割への期待が高まっています。4月に、東京証券取引所が100株あたりの投資金額を10万円以下に引き下げを要請したことも、株式分割を後押ししそうです。個人投資家の門戸を広げる狙いからも可能性は十分あります。
また、2027年2月期までの中期経営計画「しまむら2027」では、売上高7,250億円、営業利益665億円を目指しており、都市型出店の強化やECとのバランス戦略も盛り込まれています。すでに当初の予定より目標数値を上方修正しており、かなり順調に進んでいることがわかります。この調子で業績が好調であれば、株価の上追いも現実味があります。
さらに注目すべきは、株主還元方針の強化です。DOE(株主資本配当率)を従来の2.0%から3.0%に引き上げ、配当の安定化と長期保有を促しており、投資家にとっては安心材料といえるでしょう。
じつはしまむらは、直近の第72期定時株主総会で受けたアクティビストからの提案「余剰金処分の件」と「自己株式取得の件」を否決しています。どちらも短期的な株主還元強化にあたり、可決して実行されれば株価の一段上げは見込めたはず。しかし、あえてそうしなかった理由には、内部留保を重視し長期戦略的な再投資を優先したからだと考えられます。
つまり「短期的株主還元強化」よりも「長期的な企業価値の向上」に軸足を置いた戦略を採っているのでしょう。この判断が適切だったかどうかは、今後の成長投資の成果次第といえます。
しまむらの株主構成をみると、32%超を創業家系株主が占めており、実質的な支配権を保有しています。そのため、アクティビストが単独で議決権ベースの過半数を取るのは極めて困難です。そのため、今後も創業家の意向が経営方針に強く反映されるとみてよいでしょう。
しまむらは、SNSで話題になるようなブランド力や爆発的ヒット商品があるわけではありません。その代わりに着実な店舗運営、堅実な財務、地域に根ざしたビジネスモデルがあります。
派手さはない。でもブレない。
そんな「地味にすごい」企業が、コロコロと発言をひっくり返すリーダーに疲れた投資家には、評価されるのかもしれません。今後のしまむらの成長戦略や株主還元の動向を注視しつつ、再び訪れるかもしれない株式分割のタイミングを見逃さないようにしたいところです。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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