はじめに
決算発表前に保有株を売るか、それとも持ち越すかは、投資家として非常に悩ましい問題です。決算発表日を把握しておらず、うっかり持ち越したというのは論外ですが、ギリギリまで悩んだ挙句、持ち越したら決算発表翌日にストップ安、もしくは売却したら翌日にストップ高──なんてことは“あるある”です。
つい先日、わたしも保有していたTENTIAL(325A)を決算発表前にすべて売却したところ、決算発表後、2日連続ストップ高となりました。持ち越していたら、どれほどの利益だったかと“たられば”の計算をするも、じつはそれほど後悔していません。
決算後にストップ高でも後悔しなかった理由
過去に何度も、決算発表を持ち越すか否かで紆余曲折がありましたが、現在は自分なりの判断基準があります。
まず、基本的には決算発表は持ち越さないことにしています。というのも、わたしの投資スタイルは、数週間から数ヶ月を投資期間とするスイングトレードで、決算をカタリストに上昇しそうな銘柄を買い、次の決算前に売るのが基本です。過去に、決算を持ち越して翌日暴落し、大きなダメージを負ったことが何度もありました。その経験から、せっかく積み上げた利益を、たった1日で台無しにするリスクは取らないことにしたためです。よって、決算を持ち越す銘柄はかなりの例外です。
では、どういった銘柄なら持ち越すかというと、最初から長期保有と決めているもの。これはおもにNISA口座で購入しています。じつはTENTIALはNISA口座枠ではないものの、最初から長期保有を前提として購入しており、実際、ひとつ前の決算発表は持ち越しています。
そもそも、わたしは当社が手がけるメイン商品のBAKUNEのヘビーユーザーです。BAKUNEだけでも上下セットで5セット保有しており、そのほか、日中のワークウェアMIGARU、サンダル、ゴルフ用インソール、布団、ベッドマットなど、ほぼすべての商品を愛用しています。上場前からのコアファンですので、上場時はもちろんIPOに応募。残念ながら落選したため、上場3日後に8%ほど下落したタイミングで購入。その後も何度かに分けて購入し、平均購入単価は2,500円程度で保有していました。
このまま少なくとも1年は保有するつもりでいましたが、5月に入ってから株価がぐんぐん上昇し、気づくと4,000円台に。当初の通期予想で計算したPERは、70倍を超えていました。
これほど株価が上昇しているので、好決算が出たとしても織り込み済みで下落する可能性が高いとも考えました。また、仮にポシティブサプライズでさらに株価が上昇したとしても、その後のバリュエーション調整により、本質的な株価の上昇余地は限られると判断しました。
そしてもうひとつ、手放したいちばんの理由は、競合が目につくようになったからです。先日、有楽町の家電量販店に立ち寄った際、入口の目立つ場所でライバル社の商品がプロモーションされていました。当社が属するリカバリーウェア市場自体は拡大傾向にあり、追い風ではありますが、他社との差別化ポイントがパッと見では分かりづらいという懸念もあります。価格帯も上下で25,000円程度とそれなりに高めのため、節約志向が広がれば逆風にもなり得ます。
そういった自分なりの考えがあっての売却のため、結果がどうであれ、後悔はしていません。
決算はどうだったのか?
実際には、決算発表後に連続ストップ高となり、わたしの予想とは大きく異なる結果となりましたが、そこまで評価された理由を決算内容から確認します。
2025年8月期第1四半期の売上高は28.5億円、営業利益は1.89億円で、前年同期の赤字から改善。同時に、通期予想を売上高で+45.9%、営業利益で+66.4%と大幅上方修正したことが、ポジティブサプライズとなりました。
市場全体では、トランプ関税の行方や中東情勢の悪化など不安材料が多い中で、当社はそれらの影響を受けにくい点も、投資家の買いを集めた要因かもしれません。