はじめに
将来の生活に向けて「お金をどうやって増やせばいいんだろう」と考えたとき、参考になるのが国の年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。私たちが払っている年金の一部を、株や債券などで運用して、将来の年金をしっかり支えるために働いてくれています。
GPIFは私たちの年金の一部を「長期・分散投資」という方針に基づいて運用しています。今回は、公的年金の運用を担うGPIFの運用方法を、個人の資産づくりにどう活かせるかを分かりやすく解説していきます。
GPIFってなに?
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、将来世代の暮らしを支えられるように、年金積立金を管理・運用している公的な機関です。公的年金は、「歳をとって働けなくなる」「病気や事故にあう」など、人生のさまざまなリスクに備えて、国民みんなでお金を出し合い、支え合う仕組みです。
日本は、現役世代が納める保険料をもとに、高齢者に年金として給付する「賦課方式」を採用しています。しかし、少子高齢化が進む中で、年金を受け取る人が増え、保険料を支払う現役世代が減っていくと、将来の現役世代の負担が大きくなる可能性があります。こうした負担をできるだけ抑えるために、GPIFが運用する年金積立金が活用されているのです。GPIFは、これまで現役世代が納めた年金保険料のうち、年金の支払いなどに充てられなかったお金を積み立て、将来の年金給付のために運用しています。
運用にあたっては、「長期運用」と「分散投資」を基本方針としています。短期間の投資は、相場の変動によって利益や損失が大きくなることがありますが、長期間保有することで値動きが平均化され、安定した収益が期待できます。また、GPIFは、2024年12月末時点で資産構成を、海外株式・国内株式・外国債券・国内債券それぞれ25%ずつとし、4つの資産に分散投資しています。さまざまな資産に分散して投資することで、世界経済の恩恵を受けながら、大きな損失のリスクを抑える効果もあります。
では、これまでの運用成果はどのようなものなのでしょうか。2023年度の運用実績は+22.67%、2001年度の運用開始から2023年度では、年率+4.36%となっています。この運用実績からも、GPIFは長期的な視点と安定性を大切にしながら、将来の年金のために着実な運用を行っていることが分かります。
個人がGPIFを真似るメリット
GPIFの運用スタイルは、投資に慣れていない人にとっても非常に参考になる考え方です。では、実際に私たちがこのスタイルを資産運用に取り入れると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
①いろいろな資産に分けて投資することでリスクを減らせる
例えば、日本の株式だけに投資をしていると、日本経済が不調になったら資産も大きく減ってしまうリスクがあります。GPIFのように、海外株式・国内株式・外国債券・国内債券など投資先を分けておくことで、一部が値下がりしてもほかの資産がその損失を補う可能性があり、リスクの軽減につながります。
②長く投資を続けることで安定した成果が期待できる
投資は始めたばかりの短期間では値動きが大きく、タイミングによっては損失が出ることもあります。実際、2024年7~9月期のGPIFの運用実績は-3.57%でした。しかし、運用が開始された2001年度から2024年9月までの長期で見ると、年率+4.26%という安定した成果を上げています。
このように、長期にわたって運用を続けることで、一時的な相場変動にも動じにくくなり、結果的に安定した収益が期待できるのです。投資において時間を味方にすることは、成功の大きな鍵となります。
③低コストを意識することで利益が手元に残りやすくなる
投資をするときは、商品の手数料(コスト)にも注意が必要です。高い手数料の商品を選んでしまうと、得られる利益が目減りしてしまうことがあります。
GPIFでは、管理運用委託手数料率(運用・管理を委託している運用機関への手数料率)は、0.02%と非常に低く抑えられています。個人の場合も、インデックスファンド(市場全体の動きに合わせる運用方法)など低コストの投資信託を活用することで、運用にかかる費用を抑え、より多くの利益を自分の資産として残すことができる可能性があるのです。