はじめに

住宅購入の資金計画は難易度が高い

マイホームの購入に必要な資金は、住宅ローンの返済資金だけではありません。購入時には登記費用や仲介手数料などの初期費用も必要です。さらには、マイホーム購入後には、固定資産税や修繕費、火災保険・地震保険などの維持費が発生します。

「今の家賃と同じくらいのローンでマイホームが持てます」といった広告文を鵜呑みにせず、ローン返済額だけでなく、トータルコストを見据えて無理のない資金計画を立てることが必要なのです。

資金計画が重要となる住宅購入において、住宅価格の高騰や金利の上昇は痛手です。少しでも将来の家計に無理なくマイホームを購入するために、いくつかの対策を紹介します。

対策1:頭金を準備して返済負担を軽くする

最近では、金融機関によっては頭金ゼロで住宅ローンを組めるケースも珍しくありません。しかし、借入額が増えると月々の返済が重くなり、金利負担も大きくなります。

理想なのは、物件価格の2割~3割程度を頭金として準備することです。たとえば前述の「年収800万円の共働き夫婦」のケースも、仮に1,000万円の資金があれば、諸費用込みで4,700万円の物件を購入しても、借入額は3,700万円に抑えることができるので、返済計画に余裕が生まれます。

また、住宅購入を考える時期が30代後半以降になると、30年ローンを組んでも完済が定年後になる可能性があります。そのため、無理なく返済を終えるには、できるだけ借入額を減らす工夫が必要です。「いつかマイホームを持ちたい」と考えているなら、できれば20代からコツコツと資金を貯めていくことがカギとなります。

対策2:物件の選択肢を柔軟に広げる

「新築・駅近・都心部」など、希望条件が多くなるほど物件価格は高騰しがちです。まずは、自分たちにとって本当に大切な条件は何か、優先順位を見直してみましょう。必要なものと、そうでないものを切り分けることで、選択肢はぐっと広がります。

たとえば、築年数は古くてもリフォーム済みの中古物件であれば、住み心地は新築と遜色なく、価格も抑えられる場合があります。また、郊外や地方都市であれば、同じ予算でも広い家や条件の良い物件を見つけやすくなるでしょう。住む地域によっては、車の所有が前提であれば駅近にこだわる必要がないかもしれません。一方で、駅から徒歩圏内に住むことで車を手放せるなら、交通費や維持費の面で結果的に駅近のほうがコストを抑えられるケースもあります。

重要なのは「何を優先し、どこを妥協できるかを明確にすること」です。条件を柔軟に見直すことで、現実的かつ満足度の高い住まい選びが可能になります。

対策3:キャリアプランを見直す

住宅の購入は、今の収入だけでなく将来の収入見込みにも大きく左右されます。そのため、キャリアプランを見直すことが住宅購入の選択肢を増やすことにつながります。

たとえば、夫婦のうち一方が専業主婦(主夫)の場合は、「家を買いたいからフルタイムで働く」という選択肢を取れば、世帯年収が増え、住宅ローンの審査や返済計画に有利になります。一方で、「今の仕事は都心に住まないと続けられない」といったケースでは、リモートワークが可能な仕事に転職するなど、収入を少し下げてでも住居費を抑えるような選択も、結果的に家計を楽にする可能性があります。

また、今後キャリアアップによって収入アップが期待できる場合は収入が増えてから家を購入することも現実的な戦略です。ただし、購入時期が遅れる分、定年退職までのローン返済期間が短くなることに注意が必要です。その場合は、頭金をしっかり準備しておくことが大切です。

対策4:親からの援助も選択肢に入れる

誰もが使えるわけではありませんが、親からの援助を受けられる可能性があるなら、前向きに検討してみましょう。

たとえば、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置(令和8年12月31日まで)」を活用すれば、一定の条件を満たすことで500万円〜1,000万円まで非課税で贈与を受けることができます。また、金銭的な援助だけでなく、「親の所有地に家を建てる」「親と同居する」などの支援を受ける方法もあります。

援助を受けることに心理的なハードルを感じるかもしれませんが、長期的な家計の安定につながる可能性がある選択肢として、家族で一度話し合ってみるのもおすすめです。

納得のいく住まいを手に入れるには

マイホームが手の届きにくい存在になっている今、自分にできる対策をひとつずつ検討していくことが重要です。

頭金を準備する、物件条件を見直す、将来の収入を増やす、親からの援助を活用するなど、どれも簡単とは言えないでしょう。マイホームに夢を抱きすぎず、落ち着いて現実と向き合いながら“納得できる落としどころ”を見つけることが重要です。

なかには「買わない」という選択に行き着く人もいるでしょう。しかし、どんな選択をするにせよ、自分の価値観や将来設計としっかり向き合い、納得のいく答えを出すことが後悔しない住まい選びにつながります。

「家計のことも考えると、このくらいの暮らしが自分にはちょうどいいな」と心から思えるようになるまで、真剣に検討するのがおすすめです。

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