はじめに
日本では人口が減少している一方で、世帯数は増加しています。総務省統計局の「令和2年国勢調査」によると、1995年には約4390万世帯だったのが、2020年には約5570万世帯にまで増えています。
「どういうこと?」と思われるかもしれませんが、これは1世帯あたりの人数が減り、1人または2人の世帯が増えたことが理由です。たとえば、ひとり暮らしも1世帯としてカウントされるため、世帯数自体が増加します。つまり、日本では家族の形が大きく変わりつつあるのです。
人口減少とともに、「家族」から「個人」へのシフトが進んでいて、未婚率も年々上昇しています。特に注目すべきは「生涯未婚率」(50歳時の未婚率)です。「令和2年国勢調査」における50歳から54歳の未婚率を見てみると、男性は1990年の4.4%から、2020年には24.2%に達していて、4人に1人が生涯未婚です。女性も同様に、1990年の4.1%から2020年には15.2%に上昇しています。
生涯未婚の場合、老後をひとりで過ごす可能性が非常に高くなります。このような状況を考えると、ひとり暮らしの高齢者は今後さらに増えていくと予想されます。では、ひとり暮らしの高齢者の生活は、どのようなものになるのでしょうか?
高齢のひとり暮らしは、決して他人事ではない
「自分は老後も夫婦で暮らすから大丈夫」「子どもがいるから安心」と思っている方も、油断は禁物です。配偶者が先に亡くなれば、自然とひとり暮らしになります。
たとえ子どもがいても、長い老後の間に関係が疎遠になることもあります。また、「子どもには迷惑をかけたくない」と考える方も多く、ひとりで過ごすケースも少なくありません。
「ひとり暮らしの高齢者」は特別な存在ではなく、誰にでも起こり得ることなのです。
日常生活で困ることが増える
高齢になってからのひとり暮らしが、どれほど困難に感じるかは人によって異なります。しかし、年齢を重ねるにつれて、自分ひとりでは解決できないことが増えていくのは確かです。いかに周囲の助けを得られるかが、とても重要になってきます。ところが、ひとり暮らし高齢者が増えている今、支援の手が行き届きにくくなり、助けを得ること自体が難しくなってきています。
助けが必要になるのは要介護状態になった場合や、認知症を発症した場合だけではありません。食料品の買い物が困難になる、ゴミ出しが負担になる、スマートフォンの操作がよくわからない、郵送される書類を読むのが難しいなど、日常のささいな困りごとが積み重なっていくのです。
こうした日常生活の質の低下に対して、周囲が「このままでは暮らしていけないのでは」と心配していても、本人は困っていないことも多いのです。そのため、介護サービスの利用や、高齢者施設への入所など、必要な支援を本人が拒んでしまうこともあります。