はじめに

2026年度から65歳以上の高齢者を対象にした「プラチナNISA」がスタートしそうですが、その目玉が毎月分配型ファンドをNISAの対象にするというもの。なぜ今さら毎月分配型ファンドなのでしょうか。


かつては5兆円ファンドも

一般的な投資信託は、年1回、もしくは2回の決算日が設けられていて、その決算日に、前回の決算日の翌営業日からの運用で得られた収益の一部を分配するのと同時に、運用報告書を作成して、ファンドを保有している受益者に開示します。

毎月分配型ファンドとは、この決算を毎月行い、その都度、運用収益の一部を受益者に分配するタイプの投資信託です。

このタイプのファンドが一時期、物凄い人気を集めました。毎月分配金を受け取れることから、まとまった資金で毎月分配型ファンドを購入し、年金的に分配金を受け取りたいというニーズに合致したのです。なかでも人気を集めたのは、三菱UFJアセットマネジメントが運用している「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」で、2008年には純資産総額が5兆7000億円に達し、日本で一番大きなファンドになりました。

ところが、2015年前後から毎月分配型ファンドは失速し始めます。理由は金融庁が毎月分配型ファンドに対して批判的なスタンスを示したからです。事実、2024年1月に行われたNISAの制度見直しにおいて、成長投資枠、つみたて投資枠のいずれについても、毎月分配型ファンドは対象外とされました。

分配金の原資とは?

それが今回、プラチナNISAが導入されるというニュースとともに、その対象に毎月分配型ファンドが含まれることから話題になりました。その是非については、さまざまな識者がすでに書いているので、改めてここでは取り上げません。

ただ、毎月分配型ファンドの特性に関して、これだけは理解しておく必要がある点を、ここで説明しておきたいと思います。

そもそも「分配金」とは何でしょうか。簡単にいえば、前回の決算日の翌営業日から今回の決算日までの運用によって得られた運用収益の一部を、受益者に対して還元する資金です。

ただし、分配金をいくらにするかは、運用会社が決められることになっています。仮に運用収益が得られたとしても分配しない、という選択肢もあるのです。

投資信託の運用収益とは、株式や債券の値上がり益、それぞれの配当金、利金、そして海外資産であれば、これらに加えて為替差益も運用収益に含められます。このように、分配金の原資となる運用収益の種類を考えると、当然のことですが、毎決算日に支払われる分配金の額は、変動するのが普通です。

ところが、なかには値動きが大きな株式を組み入れて運用しているにも関わらず、毎決算日に支払われる分配金が一定のものもあります。

たとえばインベスコが運用している「インベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」の分配金を見ると、ほぼ毎期一定額です。過去の数字を見ると、2020年1月決算から2025年5月決算まで、65期連続で1万口あたり150円が続いています。世界中の株式に投資し、かつ為替ヘッジもしないファンドであるにも関わらず、です。この間、たとえば2024年8月や、2025年4月に株価が急落する場面もありましたが、それでも150円の分配金額は変わりません。

これは「当期の収益」のみが分配原資ではないからです。同ファンドの運用報告書に記載されている分配原資の内訳で、当期の収益を見ると、2024年7月決算と同年8月決算は0円、同年9月決算は9円でした。当然、これでは150円の分配金には満たないわけですが、「当期の収益以外」という項目があり、ここからの支払によって、同ファンドは毎期150円の安定した分配金を維持しているのです。

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