はじめに

高額分配のしくみ

では、「当期の収益以外」とは何でしょうか。これには2種類あります。「分配金準備積立金」と「収益調整金」です。

投資信託の分配金は、運用収益を全額分配せず、内部留保的に蓄積することができます。これが分配金準備積立金です。

対して収益調整金とは、新たな買付によって既存の受益者が本来得るべき分配金が希薄化しないようにするための勘定項目です。

たとえば基準価額が1万150円で、150円の分配原資があるとします。これを受益者Aが1人だけで保有していれば、受益者Aが受け取れる分配金は150円ですが、受益者Bが同一ファンドを1万150円で買ったとすると、受益者が2名になるため、150円の分配原資が希薄化してしまいます。それを避けるため、受益者Bが買い付けた1万150円のうち150円を、収益調整金として切り分けるのです。

とはいえ、分配金積立準備金にしても収益調整金にしても、それをファンドの資産と切り離して、元本割れリスクのない短期金融資産で全額を運用しているとは限りません。仮にそれを実行すると、その分だけ運用効率が下がる恐れがあるので、基本的にはそのファンドの投資対象となる資産で運用されているはずです。

したがって、この2つの勘定項目からの分配が大きくなるほど、ファンドの組入資産からの取り崩しが増えることになります。これが「タコ足分配」といわれている所以です。

つまり、高い分配金が毎決算日に支払われたとしても、それが「当期の収益以外」を原資にしている部分が大きいと、基準価額への下落圧力が強まり、「たくさん分配金がもらえるのに、気付いたら基準価額が大きく下がっていました」ということになるのです。

もちろん過去にたくさんの分配金を受け取っているのだから、基準価額を下げたとしてもトータルではそれなりのリターンになっているという理屈も分かります。が、毎月分配型ファンドを選ぶ時には、その仕組みをしっかり理解しておく必要があります。

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