はじめに
保険は、長期にわたって契約することが多い商品です。医療保険、がん保険、介護保険、終身保険などの多くは「終身型」と呼ばれ、特に医療保険やがん保険では、保険料を一生払い続ける「終身払い」が一般的です。
終身払いの場合、生きている限り保険料を支払い続ける必要があります。もちろん、それが必ずしも悪いわけではありませんが、亡くなるまで医療保険やがん保険に加入し続けることが、本当に合理的とは限りません。見直しをしないまま払い続けていると、結果的に損をする可能性もあるのです。
保険には「やめどき」があります。では、どのような保険を見直すべきなのか?そしてそのタイミングはいつなのか?一緒に考えていきましょう。
がん保険に一生入り続けると損?
若いうちは、がんにかかる可能性は低いものの、罹患した場合には収入が減るリスクがあるため、保障があることで安心につながります。
一方で、65歳を超えると公的年金の受給が始まり、収入減のリスクは下がるため、がん保険の必要性も相対的に下がります。とはいえ、治療に専念できるよう、ある程度の保障があると安心です。
75歳を過ぎると、「後期高齢者医療制度」の対象となり、医療費の自己負担が所得に応じて1〜3割に軽減されます。高齢になると、抗がん剤治療や手術に耐えられる体力があるかどうかも重要です。90歳を超えると、医師が積極的ながん治療を勧めないケースも増えてきます。
治療が現実的でない場合、がん保険に加入し続ける意味は薄れていきます。そのため、がん保険は「終身で入っておけば安心」ではなく、後期高齢者になるタイミングで、自分の健康状態と相談しながら見直すことが大切です。
医療保険の「やめどき」とは?
高齢になると、病気にかかるリスクが高まり、入院や治療の機会も増えてきます。それにともない医療保険の保険料も上がっていきますが、高齢になったからといって、必ずしも医療保険が必要とは限りません。
その理由の一つが、「高額療養費制度」の存在です。年金暮らしになり所得が減ると、この制度により医療費の自己負担が軽減されます。
70歳以上で一般的な所得(年収156万〜約370万円)の場合、医療費の自己負担の上限が月額57,600円に設定されています。仮に医療費が10万円かかっても、超過分は公的制度により支援されます。住民税非課税世帯の場合は、負担の上限がさらに軽減されます。
さらに、75歳以上は「後期高齢者医療制度」により、所得に応じて自己負担の割合が異なります。例えば、課税所得が145万円未満の一般的な所得の人は、医療費の自己負担が1割になります。
高齢者は、病気になる確率も上がり、入院することも多くなるものの、制度によって医療費の自己負担が大幅に軽減される仕組みになっているのです。
こうした点を踏まえると、高齢になったら医療保険を見直し、必要に応じてやめる判断も合理的だといえるでしょう。