はじめに
近年、米国株への投資が主流となるなか、ヨーロッパ市場にも関心が向き始めています。なかでも「GRANOLAS(グラノラス)」と呼ばれる、欧州を代表する成長企業群は、分散投資の選択肢として注目されています。本記事では、GRANOLASの成り立ちや業種別の特徴、想定されるリスク、そして米国・日本株に偏りがちなポートフォリオにおける分散効果を探ります。
欧州株が再注目される理由──政策転換と資金流入の波
2025年7月、アメリカのS&P500指数は6営業日連続で過去最高値を更新する場面もあり、強い値動きでした。今年に入り、アメリカより力強く上昇しているのがヨーロッパで、すでに注目されている投資家の皆様もいらっしゃるでしょう。
2024年6月、欧州中央銀行(ECB)は約5年ぶりに利下げへと舵を切りました。これはヨーロッパ経済に対する政策転換の明確なシグナルです。さらに、2025年3月にはドイツと欧州連合(EU)がそれぞれ財政拡張策を発表。財政と金融の両面で景気支援策が進み、ヨーロッパの株式市場にも本格的な資金流入が始まりました。
これまで米国株に比べて注目度が低かったヨーロッパ市場が再評価されている背景には、欧州版の「マグニフィセント・セブン」とも言える「GRANOLAS(グラノラス)」の存在があります。なお「マグニフィセント・セブン」とは、AppleやNVIDIA、Microsoftなど米国を代表する大型成長株7社を指す通称で、近年の米国株高を牽引してきた中心的な銘柄群です。2020年にゴールドマン・サックスが発表したレポートにより初めて登場したこのワードは、昨年からの欧州株の牽引役でもあり、すでに注目を集めているものの、今からでも遅くない注目テーマといえるでしょう。
「GRANOLAS(グラノラス)」とは?欧州を代表する11銘柄
まずGRANOLASとは何か?というところからお伝えしましょう。
「GRANOLAS(グラノラス)」とは、欧州株式市場を代表する大型グロース株11銘柄を指す造語で、2020年に米ゴールドマン・サックスが提唱しました。その名称は以下の11社の頭文字を組み合わせたものです。
GSK……GlaxoSmithKline(グラクソ・スミスクライン)/英国製薬企業
ROG……Roche Holding(ロシュ・ホールディングス)/スイス製薬企業
ASML……ASML Holding(エーエスエムエル・ホールディング)/オランダの半導体製造装置企業(EUV)
NSRGY……Nestlé(ネスレ)/スイス食品・飲料企業
NVS……Novartis(ノバルティス)/スイス製薬企業
NVO……Novo Nordisk(ノボ・ノルディスク)/デンマーク製薬企業(糖尿病治療薬中心)
OR……L’Oréal(ロレアル)/フランスの化粧品・日用品企業
MOH……Moët Hennessy Louis Vuitton(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)/フランス高級ブランド企業群
AZN……AstraZeneca(アストラゼネカ)/英・スウェーデン系製薬企業
SAP……SAP(エス・エー・ピー)/ドイツのERPソフト企業
SNY……Sanofi(サノフィ)/フランス製薬企業
米国のGAFAMやマグニフィセント・セブンがテクノロジー中心であるのに対し、GRANOLASは、製薬・消費財・ブランドといった生活に密着し、景気に左右されにくいディフェンシブセクターに強みを持ちます。