はじめに

周知の通り、7月20日の参議院選挙で、与党である自民党と公明党は〝惨敗〟しました。現在の政権は極めて不安定になり、政局(政界の情勢、転じて政界の権力闘争)は混迷の様相を呈しています。

株式市場でよくいわれるのが「政局は売り」。日本市場において売買代金の過半を占める外国人投資家は政局を嫌い、結果的に政局が相場の下落につながるとされるからです。しかし、本当に「政局は売り」となっているのでしょうか。ここでは、過去の選挙で与党が大敗した後の相場動向を調査し、検証してみます。


「政局は売り」は本当?

7月20日の参議院選挙で、与党である自民党と公明党は議席数を減らし、参議院で過半数を割り込みました。2024年秋の衆議院選挙でも自公両党は大敗を喫していたため、これで衆議院、参議院とも自公が過半数割れ。今後、与党が提出した予算や法案を通すためには、野党のいずれかと協力する必要があるでしょう。この記事を書いている7月末現在、石破茂首相は8月中にも退陣する意向と報じられており、今後は自民党総裁選や衆議院の解散総選挙など、当面の間、日本の政治はごたごたしそうです。

足元の株価は、参院選後の「日米間の関税交渉合意」を受け、23日、24日と連日の急上昇となりました。しかし、日本の政治がしばらく不透明な状態であることや、今後は国策が停滞しそうなことを考えると、予断を許さない状況です。外国人投資家からすると、日本の政治の先行きが見えない、いわゆる「不確実性」が高まっており、積極的な投資はしづらい可能性があります。株式相場でいわれる「政局は売り」の状況といえるでしょう。

では、果たして過去に行われた選挙で与党が大敗した際、株式相場は下落したのでしょうか。2000年以降、過去の国政選挙で与党が大敗したケースは

  • 2000年6月 衆議院選挙
  • 2003年11月 衆議院選挙
  • 2007年7月 参議院選挙
  • 2009年8月 衆議院選挙
  • 2012年12月 衆議院選挙

の5回ありました(筆者調べ)。2000年以降としたのは、ITバブルの前後で相場付きが変化したと思われるため。以下の表は、同選挙から「1カ月後」「半年後」「1年後」の日経平均株価の値動きをまとめたものです。

注視すべきは「相場の転換期」

この表から判明する点を述べていきましょう。与党が大敗した1カ月後は、日経平均株価はほぼマイナスで推移しています。唯一の例外は2012年12月の選挙。この選挙では、民主党を中心とした連立政権が大敗し、自民・公明両党が政権を奪還。民主党政権下で株式相場は低迷が続いていたため、政権が自公の手に戻ったことによる“期待感”によって、株式相場が押し上げられました。この“期待感”の有無が、それ以前の4回の「与党大敗ケース」と大きく異なる点でしょう。

では、半年後の推移はどうでしょうか。2012年12月の選挙後、故・安倍首相が打ち出した「アベノミクス」と、日銀による大規模な金融緩和、いわゆる「黒田バズーカ」によって株式相場が急上昇したため、半年後、さらには1年後も日経平均は大きく上昇しています。

2012年以外では、2003年11月の選挙後も日経平均は上昇しました。これは2003年5月、政府がりそな銀行に約2兆円の公的資金注入を決定し、それをきっかけに株式相場が反転していたことが主因。この公的資金注入によって、日経平均は7000円台後半から2006年4月の1万7000円台半ばまで、一気に駆け上がりました。

つまり、国政選挙で与党が大敗しても、相場の流れを大きく転換させるような施策が行われれば、株式相場は中長期的に上昇するということ。一方で、そうした転換期がない限り、与党大敗後の株式相場はズルズルと下落しやすい傾向があるといえます。その点で、「政局は売り」という見方は、あながち間違ってはいないことになります。

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