はじめに

アクティブファンドは新規設定のものを買ってはいけません。しかし、それでは運用資金が集まらず、アクティブファンドの新規設定が成り立たないというパラドックスに陥ります。それを解決する方法はあるのでしょうか。


過去の運用成績が分からない新規設定ファンド

なぜ、新規設定のアクティブファンドを買わない方が良いのでしょうか。当コラムでも何度か書いていますが、アクティブファンドは運用者の能力が、その成績に反映されるからです。

しかし新規設定の場合、マーケットサイクルのなかで、運用者がどの程度の成績を維持できたのかを見るためのデータがありません。それでは、マーケットが下げた時にどの程度、運用成績の下落を小さく抑えられたか、あるいはマーケットが上げた時にどの程度、ベンチマークをオーバーパフォームできたかを判断できず、良いファンドを選ぶことができなくなります。

対してインデックスファンドは、指数への忠実な連動を目指す運用が行われるため、過去の運用成績が無くとも、連動目標とされる指数の値動きを見れば、リスク・リターンの度合いをおおまかに把握できます。つまりインデックスファンドは新規設定で買えますが、アクティブファンドは運用が開始されてから3年、あるいは5年が経過するまで買わない方が良い、ということになります。

運用方針や運用哲学は何とでもいえる

とはいえ現実問題として、新規設定のアクティブファンドを買う人がいるのも事実です。そして、そういう人たちの多くが、運用方針や運用哲学、あるいは運用者の好き嫌いといった、雲を掴むような判断基準でアクティブファンドを選んでいます。

確かに運用方針や運用哲学は大事ですが、表向きいくら立派な言葉を並べたとしても、それがリターンやファンドの持続性につながるとは限りません。

たとえば「長期投資で生活者と社会の幸せに貢献するため、本当にいい会社に投資します」、「競争優位性を有する企業を厳選して投資します」といったことを掲げたアクティブファンドがあるとします。こうした甘言を弄されて、「ああ、これなら安心して運用を任せられそうだ」と思う人が少なからずいるから、今でもアクティブファンドの新規設定が成り立っているわけですが、この手の言葉を信じて投資するのは単なる宗教です。

投資とは結局、自分の資産を増やすために行うわけですから、もっと冷徹にデータ、つまり過去の運用成績を見て、判断する必要があります。

運用成績が振るわず資金が集まらないファンドは潰す

ただ、それだとアクティブファンドは大きな問題に直面します。冒頭でも触れたように、新規設定は買わない方が良いということになれば、そのアクティブファンドは運用資金を集めることができず、運用そのものが成立しなくなってしまいます。

この問題を解決する方法は2つあります。

ひとつは運用会社が自己資金でパイロットファンドを新規設定し、5年程度運用して運用成績が良かったら、一般向けにリリースすること。ただしこの方法は、ある程度、規模の大きな運用会社でなければ実現が難しいでしょう。設立から間もない、まだ運用資金の規模が小さく、会社としての純資産がほとんど無いような運用会社では、パイロットファンドを立ち上げることすらできないと思います。

そこで、設立から間もない独立系の運用会社は、金融庁の新興運用業者促進プログラム(日本版EMP)を活用して、機関投資家から運用資金を集めてパイロットファンドを立ち上げ、5年程度運用して運用成績が良かったら、個人向けにリリースします。

もちろんある程度の運用資金が集まらなければ、運用会社としての経営が維持できなくなる恐れはありますが、近年ではミドル・バックオフィスの外部委託などの規制緩和が進んでおり、それらを活用すれば、経営コストを極限まで引き下げた運用会社が成立する可能性もあります。

また、5年の運用期間を経てもなお運用成績が振るわず、しかも資金が集まらないようなアクティブファンドは、5年の運用期間を満たした時点で、お取りつぶしにしても良いと思います。投資信託の運用資金として拠出した資金は、たとえ運用会社がお取りつぶしになったとしても、保有している受益権口数に応じて返還されますし、何よりもこの方法を用いれば、個人が実害を被らずに済みます。

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