はじめに

「どうせ私はひとりだし、亡くなったら火葬して、どこかに灰を撒いてくれればいい」と軽く考えている方もいるのではないでしょうか。実際、私の知人にもそのように話す人がいます。しかし、現実には亡くなった後の手続きは、決して簡単なものではありません。

例えば、火葬するだけでも「火葬許可証」が必要です。そのためには、故人が住民登録していた自治体に「死亡届」「死亡診断書」(または「死体検案書」)「火葬申請書」など、いくつもの書類を提出しなければなりません。

散骨は、法律で禁止されているわけではありませんが、どこにでも撒けるわけではなく、地域によっては条例で禁止されている場所もあります。

葬儀を行う場合には、葬儀会社の手配や僧侶の依頼など、多くの準備が必要です。葬儀が終わっても、公共料金や携帯電話の解約、医療費の未払い対応、遺品整理、相続手続きなど、さまざまな対応を誰かがしなければなりません。

簡単に考えてしまいがちですが、死後の手続きは本当に大変です。

亡くなった本人にとっては、関係のないことかもしれませんが、残された人たちにとっては大きな負担となります。だからこそ、生前に何が必要なのか、しっかりと考えておくことが大切なのです。


葬儀の準備

人が亡くなってから数日間は、本当に慌ただしく、悲しみに浸る間もないほどです。近親者への連絡をはじめ、死亡診断書の受け取り、葬儀社への連絡、ご遺体の搬送や退院手続きなど、次々と対応しなければならないことが続きます。

さらに、死亡届の提出や埋葬許可証の取得といった行政手続き、葬儀社を決めて葬儀の準備も急ぎ進める必要があります。葬儀社が決まったら打ち合わせに加え、遺影や死装束の準備、宗派の確認、僧侶への連絡と依頼、「お布施」「お車代」「お膳料」の用意、初七日の準備など、短期間のうちに決めなければならないことが山ほどあります。

死後の手続きとは

葬儀が終わると、次は市区町村役場で各種手続きが始まります。例えば、戸籍謄本や法定相続情報一覧図の写し、住民票の除票などを用意し、それぞれの申請を行う必要があります。

世帯主が亡くなった場合には、世帯主変更届の提出が必要になりますし、年金受給者であれば年金受給者死亡届、医療保険や介護保険についても資格喪失届を提出しなければなりません。

あわせて、生命保険の請求、銀行口座の解約、電気・ガス・水道・新聞・インターネット・携帯電話・クレジットカードなど、さまざまな契約の解約や名義変更も必要です。

私の母が3年前に亡くなったのですが、銀行口座とクレジットカードがそれぞれ1つずつと比較的シンプルでしたが、それでも田舎(徳島)で限られた滞在期間内にすべての手続きを終えるのは、とても大変でした。

それぞれの手続きには、期限があります。例えば、年金受給者死亡届は死亡後10日以内(※)、介護保険の資格喪失届は死亡後14日以内に手続きをしなければなりません。相続や不動産が絡むと手続きはさらに複雑になり、場合によっては家族間のトラブルに発展することもあります。また、遺品整理も大きな負担となるケースも少なくありません。

※厚生年金受給者の場合。国民年金受給者が死亡した場合は、死亡後14日以内

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