はじめに

なぜ「年収目安」だけでは危険なのか

ご相談者さまは現在賃貸住宅にお住まいです。お子さんが産まれる予定であることから、マイホームの購入を検討しています。

ご相談者は、物件探しに当たり購入予算の目安を考えるために、インターネットで調べ、住宅ローンの借入可能な金額として「年収の7倍」が目安になることを知りました。現在の夫の年収は約700万円、妻の年収が約400万円、世帯年収は約1,100万円です。計算上では、7,700万円の住宅ローンが借りられる目安になります。

ご相談者は希望するエリアに約6,000万円の物件を見つけたものの、いざ購入するかどうか決断する際に、「本当にこの物件を購入して、ローンをちゃんと返していけるのだろうか」という不安から、踏み切れずにいたそうです。そこで、「今後の生活に影響を及ぼさない範囲で、安心して借り入れできる住宅ローンの目安額を知りたい」というのがご相談のきっかけです。

ご相談者のように、マイホーム購入を検討する際に、多くの方がまず「年収の〇倍」といった目安や金融機関が提示する「借入可能額」を参考にします。確かに、これらは予算を決める上での参考にはなりますが、あくまで金融機関が「貸せる額」の上限であり、「無理なく返せる額」とは限りません。

人生には、マイホーム購入以外にも「子どもの進学」「車の買い替え」「老後資金」など、それぞれ大きなお金が必要になるライフイベントがあります。価値観や優先順位はご家庭によってそれぞれで、どのような選択をするかで、かかる金額や家計への影響が大きく変わります。

こうした将来の収支の変化を考慮せずに、現在の年収だけを目安にしてローンを組んでしまうと、数年後に「こんなはずではなかった」という事態に陥りかねません。マイホームという大きな買い物をする前には、家族の「ライフプラン」を具体的に描き、将来のお金の流れをシミュレーションすることが欠かせません。

キャッシュフローの見える化から始める

そこで、まず相談者夫婦の今後のライフプランについて、ヒアリングを行いました。

「お子さんは何人欲しいですか?」
「奥様は出産後、どのような働き方を想定していますか?(育休取得期間、時短勤務の有無など)」
「お子さんの進学プランはどのように考えていますか?(私立か公立かなど)」
「車は何年ごとに買い替える予定ですか?」
「毎年、家族旅行には行きたいですか?」

といった具体的な質問を通して将来の夢や希望を数字に落とし込んでいき、将来数十年にわたる家計のお金の流れをシミュレーションした「キャッシュフロー表」を作成します。

キャッシュフロー表を作成したところ、ある一定の期間、家計が厳しくなる「耐え時」があることが見えてきました。それは、「奥様の育休・時短勤務による収入減」と「お子さんの保育料負担」、そして「住宅ローン返済の開始」という3つの支出増・収入減が重なるタイミングです。

ただし、事前にこの「耐え時」が分かっていることで、対策を立てることができます。シミュレーション結果を見て、「この時期が一番大変なんですね」とご夫婦も納得。出産後に想定していた「車の買い替え」のタイミングを2年後ろにずらすことで、「耐え時」の支出を抑えることに。また、その際に全額を貯金で賄うのではなく、これまで積み立ててきたNISAの資産を一部活用する方法も提案しました。

あなたの収入の適正ローンはいくら? お金のプロが家計を無料診断[by MoneyForward HOME]