はじめに
住宅費以外の資金計画も合わせて立てる
Aさん夫婦は結婚当初からつみたてNISAを始めており、現在は新NISAとiDeCoで積み立てをして資産形成に取り組んでいます。ご夫妻からは、「将来のためと思って積み立てていたけれど、いつ、どのように使うかは考えていなかった」という声が聞かれました。
NISAは無期限かつ非課税で運用できるため、将来のために長期積立をされている方が多いでしょう。資産形成をする上で長期積立は大事ではありますが、老後まで一切手を付けてはいけない、というものではありません。
ライフプラン上の重要なイベント(今回であれば車の購入)のために、その一部を計画的に取り崩して利用することも、賢い使い方の一つです。資産形成は「貯める・増やす」ことだけでなく、「いつ・何のために・どのように使うか」という目標や、出口戦略まで考えることが大切です。
また、今回のシミュレーションで、今後もNISAとiDeCoの積立を続けていくことで、公的年金にプラスして十分な老後資金を準備できる見通しが立ちました。「老後は今の積立を続けていけば大丈夫」という安心感が、現在のマイホーム購入という大きな決断を後押しする材料にもなります。
ご相談者は、キャッシュフロー上、毎年の家族旅行の予算や、生活防衛費もしっかりと確保した上で、当初検討していた物件価格から予算を500万円上げても、問題なく返済していけることが分かりました。
実は、最初に検討していた物件は、広さや間取りの面で「ちょっと狭いかもしれない…」という妥協点があったそうです。「支払いのことが心配でなかなか決断できませんでしたが、予算の目途がわかったので、より希望条件に合う物件を探し直すことにしました」と、おふたりの表情が明るくなったのが印象的でした。
共働き夫婦必見!ペアローンの賢い組み方
ご相談者夫婦はマイホーム購入に当たり、ご夫婦それぞれが住宅ローンを組む「ペアローン」を選択するつもりですが、奥様から「できれば私の負担額を少なくしたいので、夫の借入割合を多くしても問題ありませんか?」という質問がありました。
ペアローンのメリットの一つが、夫婦それぞれが「住宅ローン控除」を受けられることです。住宅ローン控除は、年末のローン残高の7%を最大13年間所得税から控除される制度です(所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税からも一部控除)。控除の対象となる借入額には、住宅の性能や世帯等の条件に応じた借入限度額が設定されています。
いずれかの借入割合を多くすることはできますが、所得と借入額のバランスによっては、控除を最大限受けられなくなってしまう場合もあります。この仕組みを説明し、ご夫婦の所得状況を元にシミュレーションした結果、世帯全体として住宅ローン控除を最大限受けられる借入割合についても、ご納得いただくことができました。
購入前の計画が理想のマイホームへの近道
マイホーム購入は、多くの人にとって人生で最も大きな買い物です。それゆえに、どれくらいを予算としていいのか把握しづらく、ご相談者のように不安を感じるのは当然のことです。
年収や金融機関が提示する「借入可能額」から目安を知ることはできますが、無理なく返せる額は生活スタイル、今後のライフプラン、余裕資金などによって同じ年収でも異なります。
「借りられる」からといって、上限いっぱいにローンを組んでしまったことで、新居での生活や、他のライフイベントに影響を及ぼしてしまっては、元もこもありません。
購入前の少しの手間を惜しまず、ご自身のライフプランとしっかり向き合い、専門家の知見も活用しながら、心から納得のいく決断をしていただきたいと思います。「よくわからない」や不安を「何となく」で放置せず、シミュレーションして「見える化」していくことが、理想のマイホームに巡り合うための近道になります。その先には、きっと安心で豊かなマイホームでの暮らしが待っているはずです。