はじめに
株高の夏、投資家心理は強気に傾きました。同時に「近いうちに暴落が来るのでは」と不安を抱く方も多いのでは。市場急落は偶然ではなく、必ず背景にパターンや構造的要因があります。本記事では過去の事例や投資家心理、「ポジションの傾き」に注目し、暴落が起こりやすい条件と備え方を解説します。
市場急落とは何か?
米市場でも東京市場でも、今年の夏は過去最高値をつける株高の夏となりました。そんな時に多くの投資家が気にするのは「近いうちに急落が来るのでは」という懸念ではないでしょうか。
市場急落とは、一般に株式市場で「短期間に急速に価格が下落する現象」を指します。通常は調整や景気循環の一部として発生しますが、極端な暴落は経済に深刻な影響を及ぼすことがあります。例えば、定義としては株価が直近高値から20%以上の下落はベアマーケット(弱気市場)とされます。
暴落は偶然ではなく構造的に起きる
株式市場の急落は、決して偶然の産物ではありません。その背後には、歴史に繰り返し現れたパターンや、市場心理の変化、そして「ポジションの傾き」と呼ばれる投資家の行動特性があります。
「ポジションの傾き」とは、市場参加者の持ち高が一方向に偏ることで、売りや買いが一斉に膨らみやすくなる状態を指します。投資家が市場急落時に振り回されないためには、こうした構造的要因を理解しておくことが重要です。そうすれば、闇雲に心配する必要はなくなります。
急落を引き起こす三大要因
まず、市場急落をもたらす典型的な原因は「投機の過熱」「パニック売り」「バブル崩壊」の三つです。
投機の過熱
「投機の過熱感が出てきた」という言い回しを耳にすることもあるでしょう。これは、実体価値以上に値上がり期待で買いが集まり、価格が必要以上に膨んでしまう状態です。
1929年の米国株暴落、2000年のITバブル崩壊、2008年のサブプライム危機はいずれも代表例で、共通して「根拠の薄い高値追い」が広がっていました。
パニック売り
突発的な利益確定や悪材料の顕在化、大規模災害・戦争・パンデミックなど未曽有の外部要因によって、市場全体が過度の恐怖に包まれ、保有資産の売却が一斉に進む現象が「パニック売り」です。
1987年のブラックマンデーや2020年のコロナショックでは、このパニック売りが市場暴落のトリガーとなりました。
バブル崩壊
投機によって価格水準が本来の価値から乖離し、需給バランスが逆転することで期待が急速にしぼむことで一気に崩壊が始まるーーそんな“熱狂後、我に返ったとき訪れる反動”が、「バブル崩壊」の本質です。
つまり、市場心理がグリード(過度な強欲)からフィア(恐怖)へ急変すると、パニック売りが雪崩を起こし、価格下落が自己増幅的に進行します。
「ポジションの傾き」が市場を動かす
つまり、市場のリスクは、必ずしも経済のファンダメンタルズの悪化だけで高まるわけではありません。重要なのは「市場参加者のポジションが一方向に偏っている」ことです。
多くの投資家が同時に強気(ロングポジションを持っている人が多い状態)になりレバレッジを拡大している局面では、利食い売りがきっかけとなり、雪崩のような売り圧力が市場全体に広がりやすくなります。
逆に、慎重な投資家が多い状況では暴落は起きにくい傾向があります。また、弱気(これだけ上がったんだから下がるのではないかとショートポジションを持っている人が多い状態)の場合には、上昇局面でショート(売り)ポジションを手仕舞う事情が生じ、相場を押し上げやすくなります。
実際、昨年は暴落の記憶が鮮明だったため慎重な投資家が多く、ショートポジションが積みあがっていたことから、ショートカバーが株価上昇を後押しした面もあるでしょう。