はじめに

99歳になる父は、3年前に母を亡くしてから、田舎で一人暮らしを続けています。耳が遠いためテレビの音量は大きめですが、ツッコミを入れながら見ている姿は、まるで誰かと会話しているようです。

大谷選手がホームランを打では「やった! ほら、見てみろ!」、全米オープンゴルフの早朝中継では「おっと、それはダメだな」、藤井聡太名人の将棋には「これはすごい!」と声を上げます。ときには、テレビで野球を見ながら、タブレットで将棋チャンネルを視聴していることもあり、「毎日が忙しい」と本人は言っています。

ただ一日中テレビを見ているわけではありません。朝は散歩に出かけて鳩に餌をあげたり、ラジオ体操をしたり、近所の人との会話を楽しんだり。1日約3000歩を歩くのが日課です。

そして、週2回はヘルパーさんが訪問し、週1回は近所の90歳になる友人と将棋を指しています。誰かが定期的に訪ねてくることで、家の中もある程度整頓され、生活のリズムも保たれています。

父は「孤独」かもしれませんが、社会的なつながりはしっかり持っていると感じます。私が東京への移住を提案したこともありますが、田舎を離れるつもりはないようです。母を亡くした後も、父は自分なりの一人暮らしを楽しんでいるようです。もちろん、一人の寂しさはあると思いますが、「孤立していない」という点で、私も安心しています。


「孤立しない」ことの大切さ

国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査(2022年)」では、日常的なコミュニケーションの頻度について調べています。回答の選択肢は、「毎日」「2~3日に1回」「4~7日(1週間)に1回」「2週間に1回」「1か月に1回」「ほとんど話をしない」というものです。

年代別のデータを見ると、80代以降では「毎日会話をしている」人の割合が大きく減り、7割程度になっています。

一人暮らしの高齢者(単独高齢世帯)だけの調査結果では、男性で「毎日会話をしている」人は40.7%、「2〜3日に1回」と答えた人は29.6%です。女性では、「毎日会話をしている」と回答した人が49.6%、「2〜3日に1回」が34.4%となっています。

男性は約30%、女性は約15%の人が、4日以上に1回しかコミュニケーションを取れていないことになります。中には、「2週間に1回以下」と答えた人も男性で2.7%、女性で2.0%おり、もし孤独死が起きた場合に発見が遅れるリスクも懸念されます。

この調査では、「孤独感」を感じるかどうかも尋ねています。年代別では、85歳以上が最も高く、「常に感じる」が5.2%、「ときどき感じる」「たまに感じる」を合わせると52.2%になり、半数以上が孤独を感じていることが明らかになりました。

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