はじめに
3つ目の数字【将来の「年金見込額」】
最後に確認したいのが、将来の年金見込額です。これは日本年金機構の「ねんきんネット」でシミュレーションができます。
今の給与体系で定年まで働いた場合と、転職して年棒制になった場合とで比較してみると、毎月の厚生年金保険料の違いが、将来の年金額にどう反映されるかが見えてきます。
例えば、現在の年収900万円(基本給+賞与100万円×2回)から、同額の年棒制に変わるとします。賞与分の標準賞与額がなくなるため、毎年の厚生年金保険料は減りますが、その分、将来の老齢厚生年金の額も下がる可能性があります(差額は加入年数や上限到達状況により異なります)。
これは障害年金や遺族年金など、万が一の給付にも影響します。「手取りが増えるから良い」と短期的に判断するのではなく、生涯収支や老後資金計画の中でバランスを見ることが重要です。
数字を押さえて「生涯視点」で判断を
転職は収入面だけでなく、将来の生活設計にも直結します。今回の「3つの数字」—現在の標準報酬月額、年間賞与額、将来の年金見込額—を事前に確認することで、転職後の手取り増減だけでなく、老後や万が一の保障まで見通すことができます。
高収入層ほど年棒制の「厚生年金保険料の上限効果」で短期的な手取りが増える一方、長期的には年金や給付が減る可能性もあるため、慎重な検討が必要です。
転職条件を比較する際には、年収額だけでなく、社会保険料と将来給付のバランスを「生涯視点」で判断しましょう。