はじめに

買い取り時の発見が古書店の醍醐味

店の経営に欠かせない、古書の買い取り。古書を売りに来るのはどんな人で、値付けはどう行っているのでしょうか。そして、この「買い取り」の中に、古書店経営の醍醐味があると、樽本さん話します。

樽本:本を売りに来てくださる方は、「百年」を知らず、売り先を探して電話をくださる方と、普段からうちを利用してくださる方、半々ぐらいでしょうか。

うちより高く買ってくれる店は、たくさんあります。もちろん、「百年」は、きちんと値付けを行っていますし、安く買っているわけではありません。ただ、10円でも100円でも高く買ってくれる店に売りたいという場合、売り先はうちじゃないと思うんです。

「百年」で本を売るお客様は、自分が大切にしてきた本だから、自分と同じような価値、感覚の人に手に取ってもらいたいと考えていらっしゃることが多いように感じます。おかげさまで、「百年なら」とおっしゃっていただくことが多いんですよ。

これは、実店舗を構えているメリットでもあります。ご来店のお客様を見れば、実際に手に取ってくれる方がどういう方か、なんとなくわかります。それに、僕らがどんなふうに本を扱っているか、本についてどんな考え方をもっているかもご理解していただけるんです。

買い取った古本の値付けの目安になるのは、古書市場です。各書籍について、相場があるんですよ。。どれぐらいの量が出回っていて、どんな価格で落札されているか。古書市場に通っていると、どれぐらい他のお店に買われているかもわかりますし、価格の変動もわかります。2、3年前は安かったけれど、今は高いなとか。

流通数というのはすごく大事で、たまにしか古書市場で見かけない本は高いし、よく見かける本はまあまあ。

お客様から仕入れた本で、古書市場で見たことがなく、僕も知らないものもあります。インターネットで検索しても出てこない本は、たくさんありますからね。

そういうときは、稀少性を考えつつ、類似の本を参考に価格を付けることもあるし、古書市場で売りに出して、相場を知ることもあります。

予想以上に高値がついたら売りますし、「これ以下では売りたくない」という止め札があるので、低すぎる価格で売れてしまうこともありません。
よく、「インターネットは集合知」と言われますが、そういう意味では、市場も集合知なんです。

知識を高め、相場を知るために、古書市場には、毎日なるべく自分で行くようにしています。仕入れや売り出す量が少ないと、スタッフに行かせることもあります。

1日の流れは、12時の開店前に店に来て、メールをチェックし、銀行へ行き、市場へ行って、あとは店にいるという感じでしょうか。その合間に、お客様から出張買い取り依頼があれば、伺います。


「本への愛」が開店のきっかけと話す樽本さん。その愛を支えるのは、利益率や在庫の回転をシビアに考える経営者の視線でした。そして、経営の話を通して見えてくるのは、古書組合が果たす重要な役割や、お客様からの買い取りで意外な出会いがあるという喜び。
次回は、インテリアや陳列方法など、愛される古本屋の“内側”に迫ります。

後半 意外と知らない商売の仕組み:隠れ家的古書店の12年

OLD/NEW BOOKSELECTSHOP「百年」
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-2-10 村田ビル2F
TEL:0422-27-6885
休日:火曜 
営業時間:12:00~21:30
http://www.100hyakunen.com/

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