はじめに

時計の代名詞ともいえるセイコー。余談ですが、わたしが愛用しているのは、1970年代に作られたセイコーのヴィンテージ時計です。そのセイコーの株価が年初来高値更新と堅調です。

上昇のきっかけは、2025年8月8日に発表された2026年3月期第1四半期決算。売上高771億円(前年同期比+4.2%)、営業利益81億円(同+60.2%)と、力強い増収増益でした。発表翌日の株価は、一時ストップ高となり、その後も堅調に推移し、投資家の関心を集めています。

なぜセイコーの業績と株価は好調なのか、そして今後の成長余地はあるのでしょうか。


時計事業が利益率改善をけん引

主力の時計事業(エモーショナルバリューソリューション=EVS事業)は、売上高501億円(前年同期比+1.9%)、営業利益77億円(前年同期比+29.1%)と大幅な増益でした。

「グランドセイコー」や「アストロン」などの高級ブランドだけでなく、「プレザージュ」「プロスペックス」といった中価格帯も好調。決算説明会の質疑応答では、利益率改善の背景に「値上げ効果」「原価低減」「在庫管理改善」が挙げられ、収益体質が強化されていることが明らかになっています。米国関税の駆け込み需要という一時的要因もありましたが、スイス勢の大幅値上げを背景に、むしろセイコーがシェアを広げるチャンスが期待されています。

じつは、セイコーの強みは時計だけではありません。

デバイスソリューション事業(小型電池・精密部品など)は売上高163億円(同+11.1%)、営業利益11億円(同+101%)と大幅増益。医療機器や産業用途で需要が拡大しています。

システムソリューション事業は売上高126億円(同+4.3%)。営業利益は微減ながら、セイコーソリューションズは37四半期連続で増収増益を達成しました。

複数の事業ドメインを持つことで、為替や景気変動のリスクを分散できる点も投資家に安心感を与えています。

今回の決算発表では、時計事業の利益率改善+デバイス事業の伸び+費用削減という3つの要因により、第一四半期でありながら通期業績予想を上方修正。売上高3,140億円(従来比+20億円)、営業利益235億円(同+10億円)としました。純利益見通しも155億円と、前期比16%増を見込んでいます。会社側は「円安が進めばさらなる上振れ余地がある」と説明していますが、一方で米国関税の影響や駆け込み需要の反動減を織り込み、予想はあえて保守的にしています。となれば、さらなる上方修正の可能性も十分期待できそうです。

また、配当予想を年120円(従来比+10円)に増額し、株主還元強化を打ち出しました。こうした施策も株価を下支えしています。

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