はじめに
メガネスーパー買収のZoffとJINS、どちらに伸びしろがあるか
2025年に入ってからの株価騰落率は、ジンズが+50%、インターメスティックが+10%と、ジンズの投資家のほうに軍配が上がります。しかし、ここからを考えた場合、どちらに成長余地があるのでしょうか?
Zoff(インターメスティック)は、創業当初から「SPAモデル(製造小売)」による効率的なオペレーションを武器に、高品質かつ低価格のメガネを短納期で提供してきました。近年はブランドコラボ戦略やパーソナルな付加価値訴求に注力しており、例えば「SUNCUT Glasses(UVカットメガネ)」や「きりまる」コラボ、「ハイキュー!!」とのアニメ連携など、話題性を高めつつ新たなファン層を取り込んでいます。
特に若年層におけるSNSでの拡散力や、ポップアップ的な商品展開は、ファッション性の高い購買行動にマッチしています。
加えて今回のメガネスーパー買収によって、戦略のスケールが一段階上がりました。地理的にも顧客層的にも確実にリーチが拡大すると期待できます。しかも不定期購買が中心だったメガネ事業に加えて、定期性のある収益モデルを獲得することで、キャッシュフローの安定性やリスク分散が一気に進みます。
ただし、このM&Aは約180億円の借入を伴うため、財務リスクの増加という一面もあることには注意が必要です。現時点でZoffの自己資本比率は75%以上と非常に健全ではあるものの、買収後の「のれん」や統合作業、シナジー発現までの期間を考えると、短期的な利益率へのプレッシャーも想定されます。
一方、JINSは、創業以来「高効率×テクノロジー」を融合した戦略で成長してきました。近年ではAIによる視力測定、アプリ連動での視力管理、顧客データの分析による商品提案など、“メガネを売る企業”から“視覚体験を提供するプラットフォーム”への進化を志向しています。
店舗運営面でも、モール・路面・駅ビル・海外含めた多様な立地戦略に加え、ECサイトの使いやすさや受け取りのスピード、レンズの即日対応など、UX(顧客体験)の最適化に重きを置いた運営が際立ちます。こうした構造が、JINSの高利益率体質を支えています。
財務的にも、JINSは自己資本比率を55%超まで改善させており、堅実な利益成長と資本効率の向上を両立しています。Zoffの大型買収による業界再編が進む中で、「競争環境の激化」にさらされる可能性もありますが、逆にいえばJINSの強みであるオーガニックな成長力がより評価されやすくなるとも考えられます。
現時点での株価の割安さをはかる指標PERは、インターメスティックが24.8倍、ジンズホールディングスが31.1倍。今期の営業利益の伸び率は、インターメスティックが前年比+10%、ジンズホールディングスが+37.9%ということを考慮すると、ジンズのほうが割高とは一概にいえません。
ただし今後、インターメスティックの業績に買収分が加われば、20%成長も現実的となり、現状の株価はむしろ割安とも考えられます。
個人的には、インターメスティックにまだ伸び代があるように感じます。ただし、これから秋冬に向けてサングラスの売り上げは落ち込むことが避けられないでしょうから、それを補う戦略があるかどうかに注目です。
いずれにしろ、成熟産業がこうして盛り上がるのは投資家としてもうれしい限りです。メガネ業界だけでなく、今後もこうした“オールドエコノミー”の復活を期待しています。
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