はじめに

政局の変化は一時的に株価を押し上げやすい一方で、中期的には財政や金利リスク、長期的には高齢化や債務といった構造課題が重荷となります。投資家には、短期の期待感に振り回されず、政策テーマを取り込む柔軟さが求められます。石破首相辞任から総裁選へと続く局面に、何を注視すべきか整理します。


石破首相辞任と市場の即時反応

政局が変化しています。直近の「石破首相の辞任」から自民党総裁選までの流れを歴史的事例と重ね合わせつつ、投資家視点でどう捉え何を注視し、どのように臨むべきかが焦点です。

まず事実関係を整理すると、9月7日(日本時間)、石破茂首相が辞任を表明しました。石破首相は続投への意欲を示していましたが、党内から「石破おろし」といわれる退陣要求が強まり、このタイミングで断念したことは市場にサプライズを与えました。

石破政権では金融所得課税強化や相対的に慎重な経済政策への姿勢から、市場に一定の警戒感を与えていたため、辞任表明直後は新政権による財政拡張政策への期待感が一気に高まりました。その結果、日経平均は9月9日に初めて4万4000円台をつけ、取引時間中の史上最高値を更新。10日、11日には日経平均とTOPIXが連日で最高値を更新しました(9月11日時点)。

さらに高値を更新していけるかは、総裁選とそれに連なる内閣発足・補正予算・日銀会合といった政治イベントが、市場の「期待」と「持続性」をどう形成するかが最大の焦点といえそうです。総裁選は9月22日告示、10月4日の臨時総裁選で投開票、10日の総務会で正式決定というスケジュールです。

過去の政権交代と株式市場の教訓

日本の政治イベント、特に総裁選や首相交代局面は、投資家にとって「短期のチャンス」と「長期の試練」を同時に孕む場面です。

イベントドリブンな期待感と、直後に生じる政策不確実性リスクが交錯し、相場のボラティリティを高める傾向が見られます。過去の事例を見ると、辞任や交代のニュース直後は市場が一時的に下振れするケースが多い一方、すぐに「次の政策」への期待が先行する展開も少なくありません。

例えば、2020年8月の安倍首相辞任時には日経平均が一時2〜3%下落しましたが、翌年2021年9月の菅首相総裁選不出馬表明では、政策刷新期待から株価が上昇しました。2012年末の政権交代後、アベノミクスの「三本の矢」への期待(財政政策だけでなく金融政策への期待感もあり)から金融相場に入り、株高・円安を誘発したのは代表的な例です。さらに2014年や2017年の衆院選では、与党勝利による政策継続が株価を押し上げた事例もあります。

今回の総裁選は臨時性が強く、直ちに解散総選挙というシナリオではありませんが、新内閣が補正予算や成長投資の骨格を示すなら、市場は「ミニ・レジーム転換」として反応する可能性があります。

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