はじめに
以前、この連載で、原宿のオニツカタイガーが大盛況であることに注目して、アシックスの企業戦略について書きました。その際、「今年の夏から秋にかけて、バルセロナ、パリと旅行予定ですので、フラッグショップを訪れて現地での反応を確かめたいと思います」と宣言しております。
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実はまさに今、その旅行の真っ只中で、宣言通りオニツカタイガーのフラッグシップショップを訪れました。残念ながらパリには行けなかったのですが、ロンドンとバルセロナの2店舗を回ることができたので、その印象を報告します。
ヨーロッパの一等地に出店しても違和感がないブランド力
ロンドンでは、Piccadilly Circus駅近くの劇場でミュージカルを観るついでに、フラッグシップショップを覗きました。角地の一等地に堂々と佇んでおり、想像以上の存在感に少しびっくり。店内は洗練されていて、世界各国からの観光客だけでなく、現地の若者たちが熱心に商品を選んでいます。限定モデルのスニーカーが注目されているようで、単なるスポーツ用品店ではなく、都市型ファッションの発信地としてのアイコンのようなインパクトです。アパレルも充実していて、個人的には欲しい洋服があったのですが、旅の荷物を増やしたくないため、ぐっと我慢しました。
一方、バルセロナでは店舗の中までは入らず、外からウォッチ。場所は「グラシア通り」という高級ブランドが並ぶ通りにあり、オニツカタイガーがその一角に自然に溶け込んでいたのが印象的でした。ロンドンの店舗よりラグジュアリー感が強調されており、気軽にフラッと入るのはちょっと躊躇してしまう格式の高さ。私はかなりカジュアルな服装だったため入店を諦めました。
「日本発のスポーツブランド」が、ヨーロッパの一等地に出店してもまったく違和感がない──そのブランド力を、目で見て肌で感じたよい体験となりました。
アシックス全体の利益成長をけん引する「オニツカタイガー」
現地での印象が単なる感覚ではないことは、8月13日に発表された2025年12月期・第2四半期決算でも明らかです。
売上高は前年同期比+17.7%の4,027億円、営業利益は+37.5%の811億円、営業利益率は20.1%と過去最高を更新。すでに年間の営業利益1,500億円も視野に入る水準です。
特に目を引くのが「オニツカタイガー」カテゴリー。売上+50.1%、営業利益+54.5%、利益率はなんと39.1%に達しています。2024年12月期の決算時点では利益率34%でしたので、そこからさらに5ポイントも上昇しているのは驚きです。アシックス全体の利益成長をけん引する、立派な“主役”に成長しました。
地域別でも、日本・欧州・中華圏すべてで営業利益率が20%前後と高水準。日本では30%と突出した収益力を発揮しており、選択と集中によるビジネスの効率化が進んでいる証拠です。
この結果、2026年に掲げていた中期経営計画(営業利益1,300億円、営業利益率17%)を1年前倒しで達成する見通しとなりました。
また、アシックスは、事業の強化だけでなく、ブランドの格上げと株主との関係強化にも本気で取り組んでいます。フラッグシップショップの出店場所を見ても、パリ、ロンドン、バルセロナといった“ブランド勝負の街”を選び、グローバルでのブランド価値向上を図っています。同時に、在庫回転率の改善、サステナビリティ推進、DXの導入など、企業の地盤もしっかり整えています。
そして個人投資家に対しても、株式分割、株主優待の拡充、全国でのIR説明会など、積極的なアプローチを継続中です。那覇や札幌などの地方都市にも足を運び、参加者から好評の様子。実際、ホームページのIRページを見ると、個人投資家向けIR説明会を各地で頻繁に行っていることがわかります。
個人投資家を企業のファンにし、安定した長期投資家に育てたい──そんな意思の表れだと感じます。単に「企業を見せる」のではなく、「一緒に歩むパートナー」としての姿勢が、投資家の信頼につながっているのでしょう。