はじめに

8月中旬に長期金利が高水準をつけました。長い間マイナス金利だった日本も、これからは「金利のある世界」になってくることが予想されます。そうなってくると、今までメリットがあまりなかった国債や銀行預金の金利も上がることになり、資産運用の選択肢が広がることでしょう。

この記事では、金利が上昇することで、視野に入れておくべき金融商品、また金利上昇時にやっておくべきことをお伝えします。


「金利のある世界」で、まず整えるのは“置き場所”と“優先順位”

貯金もあるし、NISAも始めた。けれど、生活費や数年以内に使いそうなお金は、どこに置いておけばいいのだろうか。ここ数年、金利が少しずつ動き出し、昔の「預けても増えないから、とにかく投資へ」という常識は通用しにくくなってきました。実は、金利が上がる局面は守りの戦略でも資産を増やしやすい環境です。ここでは、NISAはそのまま続けつつ、貯金の置き場所をどうアップデートすべきかを解説します。

NISAは続けつつ、それ以外のお金の置き場をアップデート

長期の資産づくりはこれまでどおりNISAが主役です。非課税の恩恵は強力で、積み立てを止める理由がありません。一方、生活防衛資金や数年以内に使うかもしれない資金は、金利が上がってきた今こそ見直しの効果が出やすい領域です。超低金利の時代は普通預金に置いても増えませんでしたが、いまは預金や国債、短期債といった守りの資産でも、手堅く利息を受け取れる状況に変わっています。攻めのNISAは継続、守りの土台は金利を取りにいく設計に変えていくことが現実的です。

金利上昇でどう変わる?

金利が上がると、新規の定期預金や短い期間の債券は受け取る利息が上がりやすく、一方で既発の長期・固定金利の債券は相対的に不利になりがちです。外貨関連は為替の影響も加わるため、見た目の利回りではなく、為替ヘッジの有無とそのコスト、購入・保有にかかる費用を含めた「手取りの利回り」で比較しましょう。

初心者がまず押さえる「NISA以外」の主な選択肢

まず一つに、短めの定期預金があります。満期をいくつかに分け、期限が来るたびにその時点で条件の良い先へ乗り換える。これだけで、普通預金より受け取る利息を手堅く増やせます。中途解約のルールとキャンペーン終了後の金利だけは最初に確認しておく必要がありますが、比較的初心者でも手軽に始めることができます。

次に、個人向け国債の「変動金利・10年」です。世の中の金利に合わせて利息が自動で上下するため、上昇局面のメリットを取りこぼしにくく、価格のブレも比較的小さめです。いまの水準を固定したい場合は固定3年・5年も選択肢になりますが、「金利が動く時代」は変動型の方が相性はいいと覚えておきましょう。定期預金と同じく途中換金の条件や最低利率の仕組みは、確認しておくと安心です。

もう一段だけ利回りを高めたいなら、短い期間の債券に投資する投資信託――短期公社債ファンド(短期債ファンド)も検討に値します。狙い目は、平均残存期間が短めで低コストのものです。

海外の金利の恩恵を受けつつ、為替の上下は抑えたい方には「為替ヘッジ付き外債」という選び方があります。為替のブレを抑える代わりにヘッジ費用がかかるため、購入・保有の手数料も含めた手取り利回りで判断してください。外貨そのものを持つやり方は、金利に加え為替の当たり外れも背負うことになります。目的が「利息を取りにいく」のか、「為替差益も狙う」のかを先に決めておくと、迷いが減ります。

少し視点を変えると、住宅ローンの繰上返済も金利上昇時に有効な打ち手です。返した分だけ利息の支払いが減るため、成果がわかりやすいのが魅力です。とくに変動金利で将来の負担が気になる場合は検討余地があります。ただし、住宅ローン控除の残存期間や繰上返済手数料を確認し、手取りベースで有利な方を選びましょう。

一方で、高配当株やJ-REITは、国債利回りとの「利回り差」が縮むと相対的な魅力が薄れることがあります。買うと決めたなら、分配や配当の数字だけでなく、財務の健全性や、REITであれば家賃の上げやすさ・将来の増配余地まで踏み込んで確認しましょう。

※投資信託は元本保証ではありません。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]