はじめに
FRB(米連邦準備制度理事会)は9月のFOMCで利下げを決定し、年内さらに2回の追加利下げが想定されています。インフレの沈静化や景気減速の兆しを踏まえた「政策転換点」ともいえる今回の判断。投資家にとっては株式市場への影響をどう見極めるかが最大のテーマです。本記事では、過去の利下げ局面を振り返りつつ、2025年の金融相場に潜むリスクとチャンスを探ります。
利下げ決定の背景とFRBの政策転換
FRB(米連邦準備制度理事会)は、9月17日のFOMCで9カ月ぶりとなる0.25%の利下げを決定しました。FOMCとは、Federal Open Market Committee(米連邦公開市場委員会)の略で、FRBの金融政策を決定する会合を指します。年に8回定期的に開催され、政策金利の引き上げや引き下げといった金融政策の方向性を決める場です。金融市場にとって最も注目度の高いイベントの一つといえます。2025年は年内に残り2回の会合が予定されており、それぞれで0.25%ずつ、合計0.5%の追加利下げが想定されています。さらに来年にも0.25%の利下げが見込まれています。
今回のパウエルFRB議長の会見では、労働市場とインフレ、そして成長の動向に関して慎重な見方が示されました。失業率の上昇で雇用の下振れリスクが高まる一方、物価は依然として高水準にとどまり、経済成長は鈍化傾向にあると指摘されています。
雇用・インフレ・成長の現状認識
雇用の増加は、失業率の悪化を防ぐために必要なペースを下回っており、労働市場の力強さが後退していることがうかがえます。さらに、関税の影響で短期的なインフレ期待は高まっているものの、経済への本格的な影響はまだ見極めが必要との判断でした。
ここ数年続いてきた利上げはインフレ抑制に効果を発揮しましたが、住宅市場や雇用市場の過熱感を冷まし、景気減速の兆しも見え始めています。FRBは「インフレ抑制」から「景気下支え」へと軸足を移そうとしており、これはまさに「政策の転換点」にあたります。
利下げが意味する「景気と市場」へのシグナル
投資家にとって重要なのは利下げ局面が株式市場にどのような影響を与えるのかを理解することです。
歴史を振り返ると、利下げは株高のきっかけとなることが多いですが、その裏には必ずボラティリティの上昇や予想外のリスクも潜んでいます。
FRBは米国経済の安定を目的に2つの使命を掲げています。 一つは「物価の安定」、もう一つは「雇用の安定」です。これらを同時に達成するために、FRBは「政策金利」と呼ばれる短期金利を調整します。利上げは景気やインフレの過熱を抑え、利下げは景気を下支えする役割を持ちます。つまり利下げは「景気に陰りが見え始めているサイン」であり、同時に「金融市場に資金が流れ込みやすいシグナル」となります。