はじめに
1970年代:スタグフレーション下の利下げ失敗
1970年代、米国は「ニクソンショック」 をきっかけに、高インフレと低成長が同時進行するスタグフレーションという厄介な状況に直面しました。FRBは利下げに踏み切ったものの、インフレは収まらず株式市場は不安定化。「利下げ=株高」が必ずしも成り立たないことを示す局面となりました。
1987年:ブラックマンデーと迅速な利下げ対応
1987年10月、世界的な株価大暴落「ブラックマンデー」が発生。FRBは金融市場の安定を最優先し、即座に利下げへと動きました。この迅速な対応は市場に安心感を与え、株式市場は徐々に回復へ。利下げが「恐怖」を和らげ、投資資金を呼び込んだ典型例です。
2000年代:ITバブル崩壊とFRBの苦闘
2000年前後、米国株式市場はITバブルによる急騰の後に大崩壊を経験。ナスダック指数はピークから約8割下落。FRBは2001年から大幅な利下げを実施しましたが、株式市場が本格的に回復したのは数年後でした。投資家にとって、利下げだけでは下落の歯止めにはならず、景気や企業業績の立ち直りを待つ必要がある、という教訓になりました。「利下げ=即株高」とは限らない点を改めて投資家に突きつけました。
2008年:リーマンショックとゼロ金利・QE導入
2008年のリーマンショックでは、金融システムそのものが揺らぎ、FRBは前例のない大幅利下げとして政策金利をゼロ近くまで引き下げました。その上で量的緩和(QE)という新しい手法を導入し、市場に大量の資金を供給しました。この結果、短期的には株価は大きく下落しましたが、2009年以降の米国株は長期上昇相場へと移行しました。利下げと資金供給が「リスク資産の黄金時代」を呼び込む結果となりました。
2020年:コロナ禍の緊急利下げとV字回復
2020年、新型コロナウイルス感染拡大による世界的パニックの中で、FRBは2回にわたり緊急利下げを実施。さらに史上最大の金融緩和を行いました。一時的に株価は急落しましたが、驚異的なV字回復を遂げ、「カネ余り」が市場を歴史的高値に押し上げました。世界的な金融緩和によって生じた過剰流動性は、株式市場のみならず暗号資産やコモディティにまで広がりました。一方、2025年の利下げは、過去のどの局面とも少し異なります。