はじめに
この連載でもIPO株として取り上げ、注目していた「スキマバイト」のタイミー(215A)。株価は順調に上昇していましたが、2025年10月期第3四半期決算の発表直後から、大きく下落しています。このタイミングで上方修正を行ったにもかかわらず、なぜ投資家は投げ売っているのでしょうか?
参考記事:5年で売上が194倍! スキマバイトアプリ「タイミー」、上場後の株価はどうなる?
決算は売上・利益ともに大幅成長
9月11日に発表された2025年10月期第3四半期決算では、売上高が前年同期比30.5%増の248.2億円。営業利益は同82.5%増の50.9億円と、いずれも過去最高水準を記録しています。売上・利益ともに大幅な増収増益を達成し、通期の利益予想も上方修正するというポジティブな材料が揃いました。
決算資料によると、主力の「タイミー」事業における流通総額は849億円に達し、登録ワーカー数は1,198万人を突破。稼働率は85.9%、平均テイクレート(クライアントからの手数料率)も29.3%と、引き続き高水準を維持しており、こちらも突っ込みようがないように見えます。
成長鈍化の兆し? 業界別に見る明暗
一方で、業種別に目を向けると、勢いに陰りが見える分野もあります。
特に影響が大きかったのが飲食業界。不正利用対策の強化やコスト抑制の影響で、3Qの流通総額は前年同期比で−1.0%とマイナス成長に転じました。「スキマバイト」との相性がよいとされている飲食業界での成長鈍化は、少なからずインパクトがあります。
ただし、単なるレストラン業態にとどまらず、給食や食堂といったコントラクト業務への横展開が進んでおり、新たなプライシングモデルの試験導入(PoC)も始まっています。また、小売業界では、スーパーを中心に業務効率化が進展する一方、大手グループによるコスト抑制の影響も見られ、景気全体の足踏みもあるのかもしれません。
物流業界では+34.1%の高成長を維持。人手不足を背景に、タイミーの「コスト優位性」が派遣業との比較で支持されているようです。導入拠点の拡大や、受入負荷軽減プロジェクトの進行も追い風です。
さらに注目されるのが介護業界。流通総額は前年同期比+147.0%と急成長。無資格者と有資格者の両方をマッチングできるタイミーの強みを活かし、営業・マーケティング・プロダクトの三位一体で攻める“バーティカル戦略”が功を奏しています。