はじめに
この連載ではほとんど取り上げたことがないIPO株ですが、最近やたらと耳に入ってくるため、とても気になっているIPO株があります。7月26日上場のタイミー(215A)で、短期・単発の仕事を求める求職者と、迅速に人手を確保したい企業をマッチングするオンラインプラットフォームを運営しています。2017年6月に設立されているので、わずか7年で上場の急成長企業。しかも、創業者である社長の小川嶺氏はなんと27歳! 起業したのは大学在学中というから驚きです。
市場での存在感は大きい
タイミーのしくみをもう少し詳しく説明します。
利用者は、スマートフォンアプリを通じて、希望する時間と場所での仕事を瞬時に探し出し、マッチングすれば即働くことができます。従来は、単発といえどもバイトを始めるには、応募して、面接してといった手順を踏むのが当たり前でした。たまたま時間ができたから、その間を埋めるための仕事が見つかるなんて、常識では無理!となります。そんな既成概念を打ち破ったのが、タイミーのビジネスモデルで、現在では700万人以上のユーザーを獲得しています
じつは、タイミー経由で働くスポットワーカーさんのことを「タイミーさん」と呼ぶらしく、これは当社が、この市場での存在感の大きさを意味しています。
市場規模の拡大にともなって、メルカリやリクルートといった大手も参入していますが、すでに「タイミーさん」と呼ばれるほど認知されている当社には、強固な顧客基盤と先行者利益があります。こういったプラットフォームは、利用者が多くなればなるほどネットワーク効果が発生し、ますますシェアを拡大するといった特徴があります。そういった意味でも今後、ますますタイミーの利用者が増え、市場を独占していくようになるのではないでしょうか?
先日、飲食店を経営する友人が、タイミーを利用したところ、やってきた人は、期待値の倍以上の成果を出してくれたと感心していました。タイミーには、労働者の評価システムが組み込まれているので、この友人のようにタイミーさんの働きがよいと感じた場合は高評価をつけます。一方、タイミーさんサイドも雇用主を評価するしくみになっており、どちらも評価が著しく低下するとサービスが利用できなくなります。この相互評価システムによって、タイミーユーザーの質が維持されており、競争優位性を持っています。
ちなみにタイミーを利用するのは、おもに学生や主婦など、スキマ時間ができやすい人がメインですが、じつは、市場調査や偵察にも使われると聞いたことがあります。わたしのような個人投資家が、その企業が投資対象として魅力的かどうか、現場で働いてみるといった使い方もおもしろいと感じました。
有価証券届出書から、過去5年間の業績を見てみましょう。
目を見張るのは、売上が急成長していることです。2019年には8千万円程度だったのが、2023年には、161億円ですからざっくり194倍! 経常利益は、第5期の2021年10月期までは赤字でしたが、第6期以降、黒字転換しており、しっかり利益も伸ばしています。
上場後の株価はどうなる?
公募価格は1,450円で、東証グロース市場では、時価総額1,000億円を超える大型案件です。上場時の新たな公募はないですが、売り出し株数は37,082,200株と非常に多いため、過去の事例を参考にすると、初値は上昇しづらい傾向にあります。
上場後しばらくは、株価のボラティリティは高くなりがちなので、当面は手を出さずに見守るつもりですが、この勢いで成長を続けるとしたら、どこかのタイミングで投資対象にしたいと考えています。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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