はじめに
相続によって急に大金を手にする事例もめずらしくありません。夢のような話に感じるかもしれませんが、実はそのようなときこそ注意が必要です。なぜなら、急に大金を手にすると気が大きくなり、高級車や海外旅行に散財したり、必要以上にリスクを取った投資で資産を減らしてしまったりするケースがあるからです。
本記事では、実際に4000万を相続した方の事例から、相続などで急に資産が増えた際にありがちな失敗例、それを避けつつ将来に向けて資産を賢く活用する方法をご紹介します。
資産が急に増えた時こそ冷静になることが大切
相続で4,000万円というまとまった資産を手にしたAさん(35歳)。まとまったお金を急に手にすると、お金の使い方が乱れて人生設計が大きく狂ってしまうケースもあるという話を耳にし、資産の管理方法について不安を抱えていらっしゃいました。
Aさんの家族構成は、専業主婦の奥様(35歳)と、3歳と1歳のお子様2人です。相続する資産は、現金2,000万円と投資用の不動産(相続税評価額)2,000万円でした。
4,000万円という大きな資産は、Aさんの家計に大きなプラスであることは間違いありません。一方、教育・自宅購入・老後など、Aさん家族には今後も多くのライフイベントが待ち受けています。
では、Aさんのように資産が急増した場合にどのように資産管理をすればいいのか、注意点とあわせてご紹介します。
資産が急増した時に犯しがちな失敗
急に大金を手にすると、これまで手が届かなかった高級車や腕時計、高級ホテルへの宿泊などが身近に感じられ、衝動的な買い物が増えることがあります。収入が増えていないにも関わらずこうした支出が増え続けると、生活水準が急激に上がってしまい、後で調整が難しくなります。
その結果、大金を手にする前より資産が減り、変化した生活水準に苦しむことになりかねません。この失敗の背景には、臨時収入などは自分で汗水流して得た収入よりも大胆に使いやすくなるという心理状態「ハウスマネー効果」があります。この心理状態が原因となり、臨時収入をリスクの高い投資に回してしまうケースも少なくありません。
ハウスマネー効果は誰にでも起こり得るため、大金を手にした際には、いつもより大胆にお金を使っていないか、振り返ることが大切です。もしも支出を決めた理由として「まとまったお金が手に入った」という考えが浮かぶ場合は、危険信号かもしれません。その場合は、一度冷静になって本当に必要な支出なのかを考えましょう。
次の章では、こうした失敗を回避するための具体的な方法をご紹介します。
資産状況を整理する
相続が発生した場合には、相続税や遺留分の対応、固定資産税など、お金が必要になることがあります。こうしたお金を確実に確保するためにも、まずは相続した資産の整理から始めてみましょう。
相続した資産は、現金のように流動性の高いものと、不動産のように流動性の低いものに分けて整理します。4,000万円を相続したAさんであれば、以下のようになります。
・流動性の高い資産:現金2,000万円
・流動性の低い資産:投資用不動産2,000万円
特に相続した資産のうち不動産が多くの割合を占める場合は以下のような点に注意が必要です。
・他の相続人の遺留分※対応で現金が必要になることがある
・保有し続ける場合は固定資産税や都市計画税などの維持費がかかる
※遺留分とは、被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹以外の近しい関係にある法定相続人に最低限保障される遺産の取り分です。遺留分を侵害しないようにするため、多額の現金が必要になる場合があります。
相続した資産と相続前から保有していた資産を合計し、相続税、遺留分の対応に加え、固定資産税や都市計画税などの維持費についても、最低1年分は、現金などの流動性の高い資産で確保しておきましょう。手をつけてはいけない資産を把握することで、衝動的な無駄遣いを避けることができます。