はじめに
「進次郎ショック」到来の可能性も…?
一方、小泉氏は、総裁選に向けた所信表明で物価高対策や賃上げ推進、減税などを中心に述べました。現役閣僚として現在の内閣に配慮したと思われ、大胆な政策は首相就任後に打ち出されることになるでしょう。目立つところを挙げると、「2030年度までに国内投資135兆円」を掲げた点。どの分野を中心に投資を推進するかは不透明ですが、小泉氏の首相就任後は、設備投資関連に買いが向かいやすくなる可能性があります。また、農相として掲げた農業改革や、過去の環境相としての経験を活かしたエネルギー政策の具体案が浮上してくれば、関連銘柄に買いが集まる展開も考えられます。
ただ、高市氏のような積極財政は打ち出さず、金融政策に関する考え方も現時点では見えないため、「株式相場にとってどうか」の評価は難しくなっています。9月下旬、小泉氏優勢が報じられてから株式相場が弱含んでいることを考えると、短期的には「進次郎ショック」などと命名される、相場下落局面が訪れるシナリオは十分考えられます。その後は高市氏と同様、野党との政策協議において手腕を発揮できるかがポイントになりそうです。
議員票でトップ二人への肉薄が一部で報じられている林芳正氏は、岸田内閣で外務相、石破内閣で官房長官を務めるなど、政治的な手腕は評価されるところ。しかし、公約に目新しさがなく、国民には「従来政治家」としてのイメージを持たれていることを考えると、「期待感」という点では高市、小泉両氏に劣るでしょう。具体的な政策は、やはり首相就任後に打ち出されることになりますが、「新しいリーダー」への期待が剥がれるため、より厳しい相場展開が予想されます。ややテクニカルな話になりますが、総裁選をきっかけに相場が下落した場合、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価が13週移動平均線を割り込むようなことがあれば、相場の調整が長引くかもしれません。短期~中期目線では、その点に注意を払っておくべきです。
立憲民主党の「金融所得課税の強化」に注意
ひとつ気になるのは、立憲民主党が「4万円の一律給付」と所得に応じた税額控除制度の導入を掲げる一方、その財源案として「金融所得課税の強化」を掲げていること。これまで、金融所得課税の強化については岸田前首相や石破首相の政権下でも何度か浮上しましたが、いずれも頓挫してきました。現在、自民党と公明両党は衆参両院で過半数を割り込んでいる“少数与党”であり、国会を運営していく上で、「野党との政策協議」が必須の状況です。
おそらく、政策ごとに各野党と協議していくことになると思われますが、中でも、野党第一党である立憲民主党が掲げる政策については重視せざるを得ないでしょう。そう考えると、金融所得課税強化の現実度も増すわけです。これは、株式市場にとって明らかに逆風。2024年10月、立憲民主党の野田代表はテレビ番組で「金融所得課税を現行の約20%から25%程度に引き上げることはあり得る」と述べています。もし、現在のような相場が高値水準にあり、指標的な過熱感、割高感を指摘する声が少なくない中で「金融所得課税の税率引き上げ」を打ち出せば、投機筋に「日本株売りの口実」を与えることになるでしょう。そうなれば、一時的にせよ、相場が急落する可能性が高いと思われます。
個人的には、金融所得課税の強化を財源とする案は、各方面からの強烈な反対を受けて実施されることはないと考えていますが、与党と立憲民主党との政策協議の過程で、金融所得課税の強化が取り沙汰されるだけでも、相場が急落する公算があります。必要以上に恐れる必要はありませんが、そのような急落シナリオがあるということだけでも、念頭に置くべきです。
堅調な相場が続くにしろ、期待感が剥がれて急落に転じるにしろ、その後の展開は各候補が首相就任後に打ち出す方針や個別政策に大きく影響を受けるでしょう。また、野党との政策協議が必須であるため、各野党の政策にも目を配っておく必要がありそうです。
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