はじめに

2025年の8月には上場来高値を更新し、非常に堅調だったしまむら(8227)の株価が、9月29日の2026年2月期第2四半期決算発表以降、冴えない展開となっています。

売上・利益ともに過去最高を更新する好決算にもかかわらず、発表翌日の株価は前日比で約9%も下落。この下落は絶好の押し目買いのチャンスなのか、それとも下降トレンドの始まりなのか、気になる投資家は多いのではないでしょうか。


しまむらの出店戦略

しまむらの強みは、「半径2km・1.5万世帯」という狭い商圏設定に基づくドミナント戦略にあります。

一般的なアパレル小売が「いかに広いエリアから集客するか」に注力するのに対し、しまむらは「いかに何度も通ってもらうか」に重きを置きます。実際、来店客の中には週に2〜3回足を運ぶ人もおり、平均単価は3,000円弱と安くても、週次では1万円近い購買につながることもあるそうです。

商品の入れ替えはほぼ毎日。約4万点のアイテムを常時並べ、売れた分だけ少量ずつ補充します。こうした“宝探しのような”売場づくりが、「#しまパト」と呼ばれるSNSでの購買報告投稿を生み、情報が自発的に拡散されているのも特徴です。実際、Xで「#しまパト」を検索すると、仕事帰りの日課になっていたり、お宝発見を誇らしげに報告したりする投稿が目立ちます。

この戦略は、ここまでのしまむらの成長を大きく支えてきましたが、さらなる成長に向けての変化も見え始めています。

2025年3月に公表された「長期経営計画2030」によると、今後はこの既存戦略を“深化・進化”させる形で、都市部への出店強化と店舗の再配置・改装推進が打ち出されています。

たとえば、現在の郊外型店舗では「しまむら=生活圏の身近な店」として親しまれていますが、都市部ではまだ店舗数が少なく、認知・立地ともに課題があります。計画ではこの点を「弱み」と位置づけたうえで、今後は都市部においても高頻度来店モデルを展開できるような出店を目指すと明記されています。

また、従来のドミナント出店に加え、土地や建物の取得も検討しつつ、リロケーション(移転)や改装による効率改善にも注力するとしています。これは、単に数を増やす出店ではなく、「1店舗あたりの生産性」を高める方向に舵を切ることを意味しています。

さらに注目したいのは、リアル店舗とECの連携強化です。2025年10月にはグループ全体のECサイトを統合した「しまむらパーク」が開設され、各ブランドの垣根を越えた買い物が可能になります。2026年には新たにポイント制度を設ける予定で、利便性の向上と認知拡大の両面で会員数を一気に増やす狙いです。

ECを強化することで、リアル店舗が“受け取り拠点”として機能する場面も増えています。しまむらは、ECで注文してリアル店舗で受け取る人が圧倒的に多く、受け取りのために来店した際、注文したもの以外にも追加購入する人が半数近くいます。

今後の出店計画では、こうしたデジタル接点との親和性を考慮した立地最適化も進むと見られます。つまり、これまで成功してきた「地域密着型の小商圏モデル」は、今後「都市部対応」「デジタル融合」「店舗効率の最適化」という3つの柱を加えて進化していくフェーズに入っているのです。

好決算だったのに株価は急落した理由

ここまで見ると、しまむらは堅実な成長を続ける理想的な企業に見えます。では、なぜ株価は決算発表後に9%も下がったのでしょうか。

あらためて第2四半期決算を確認します。累計売上高は3,435億円(前年比+3.9%)、累計営業利益314億円(+0.2%)と、わずかではありますが増収増益となっています。

しかし、第2四半期単体で見ると営業利益が前年同期比で約4%減益となっているのが気になります。販促コストや人件費など販管費の増加が利益面の足かせになっており、今後改善の見込みがあるのかが注目されます。

決算発表前には株価が高値更新していたことからも、市場では成長株として期待が先行しており、「予想超過」が望まれる状況だったと考えられます。株価が高い位置にあっただけに、実績が普通に増加しただけでは不十分と受け止められ、投資家からの評価は厳しいものとなりました。

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